パトリックの分析
発売日が6月15日に変更になったようです。
パトリック一行は北から国境沿いを通り、西に向かう。
帝国との開戦に備えての事である。
地形の把握は重要であるし、国境沿いに住み着く人が居たりするからだ。
だいたい犯罪者だったりするのだが。
西にかなり進み、針葉樹の多い山岳地域から、広葉樹などが多い深い森に景色は変わる。
小川のほとりで食事の準備をさせ、パトリックはミルコと周辺を見て回る。
「ミルコ、これを見てみろ」
パトリックが小川の砂地を指差して言う。
「足跡ですな」
ミルコが確認して頷く。
「ああ、まだ新しい。素足で砂地を歩いているからハッキリと足跡が残っていて分かりやすい。足の幅を見るに人族ではない。おそらくエルフだ。歩幅からしておそらく女性か子供、人数は2人だな」
と分析するパトリック。
「探しますか?」
と聞くミルコに、
「森でエルフを捜すとか、かなり難易度高いが、やってみるか。あそこの草が倒れているからアッチだな。行くぞ」
そういうパトリックは歩き出す。
「未だに草の上の足跡は分かりません。少しでも折れていればなんとか分かるんですが」
ミルコが申し訳なさそうに答えた。
無言で歩くパトリックに追従するミルコ。
パトリックが歩みを止め、右手を開いて自分の顔の横に上げた。
後ろを歩いていたミルコがピタリと歩みを止める。
止まれの合図だ。
その後、指である箇所を示し、ゆっくり歩き出す。
ミルコもゆっくり続いて歩く。
そこには女性1人と子供が1人居た。
ただ、パトリックの予想は半分ハズレていた。
「ダークエルフか……」
ミルコが思わず口にする。
「誰っ!」
ダークエルフの女性がその声に反応した。
「警戒しなくていい、帝国の人間では無い。王国の者だ。帝国から逃げてきたのか?」
パトリックが姿を見せて、なるべく優しい声で問いかける。
ホッとした表情を見せたダークエルフの女性。
「危害は加えないので、この地で生活してる理由を教えて貰えないかな? 帝国から逃げてきたのかな?」
もう一度問うと、
「はい、私たちは帝国のさらに西の国で生活していたのですが、帝国との戦争に敗れて、人族以外は奴隷にされました。私達は奴隷商の馬車で東まで運ばれて来たのですが、馬車が翼竜に遭遇して、商人や護衛の人達は殺されてしまって、他の人達もみんな散り散りに必死で逃げて、私達は森の中に身を隠して、そのままここで生活を」
「それはいつ頃の話だ?」
「一年ほど前でしょうか、日付が分からないですが、季節は1つ巡りましたので」
「なるほど。あの翼竜かな? まあいいか。君達はこのままここで暮らすつもりか? 来年にはこの辺りも帝国との戦に突入するはずなのだが、君達さえ良ければウチで働く選択肢をあげるが?」
「帝国との戦になるのですかっ?」
「ああ、王国と帝国の不可侵条約が来年終わるからな。おそらく攻めてくるだろう」
「私達に出来る仕事はありますか?この子も働くのですか?」
「仕事はいくらでもある。その子っていったい何才だ? ダークエルフの年齢がよく分からん」
「この子は50才、人族で言うと10才くらいでしょうか」
「ふむ、まあ、見た目と同じって事か。子供なら屋敷の掃除ぐらいならあるが、それでも良いか?」
「私は何をすれば?」
「まあ、メイドかな」
「変なことします?」
「しない! そんな事したら妻に殺されるわっ!」
「あら、ご結婚されてるのですね」
残念と小さく聞こえたような気がする。
女性の名前は、グレース。褐色の肌に銀髪の長髪。緑色の瞳に、主張するバスト。
子供はノエルと言うらしい。
部下達の所に戻ると、多少驚かれはするが、パトリックのやる事に文句を言う兵士はいない。食事を済ませて出発となる。
パトリックは自分の走竜に女を乗せてみる。すんなり乗れたので、子供もと思ったが、子供を乗せるのを走竜が嫌がった。
「ん? 姉弟では無いのか?」
パトリックがグレースに尋ねると、
「あ、はい。同じ集落の出身ですけど」
「仕方ない、俺が背負って行くか」
子供を背負い歩き出すパトリックの背中で、子供が何かぶつぶつ言ってる。お尻を触られたとかなんとか。パトリックは無視して進む。何が楽しくて男の子の尻をわざわざ触らなきゃならんのかと。
ケイトからノエルに変更しました