悪い笑み
パトリックは、ミルコや他の部下達と走竜に乗り、山岳地域を移動している。
向かうは、王都軍が去った後にゴネだした部族の住む集落。
いつの間にか木製の砦モドキを築り、立て籠もっている。
「食糧を貰ってから、約束など知らんという訳か。なかなか根性が捻くれてやがるな」
パトリックは砦モドキを遠くに見ながら言う。
「お館様がそれを言いますか?」
ミルコが突っ込むと、
「俺は約束は守るぞ? 自分が言った言葉には責任を持つからな」
「ああ、そうですね。言った言葉は実行しますね。言う約束が捻くれてるだけで」
「お前、最近やけに突っかかるな」
「そりゃ、あんな地獄のような空の旅をさせられれば」
と、遠くを見る目をするミルコ。
「アレはお前達が悪い」
と、横目で見るパトリックに、
「やる前に注意して欲しかったです」
と、本音が漏れるミルコ。
「注意とか優しいヤツがする事であって、それを俺に求めるなよ」
と、自分は優しくないと言い切るパトリック。
「肝に銘じます」
「ああ、で、あいつらをどうするかだなぁ」
「出来れば殺すなとライアン殿が仰ってましたしね」
「そこだよなぁ。制圧するだけなら簡単なんだがな」
「前みたいに砦を乗り越えて、まとめ役を殺しますか?」
「それでもいいが、俺が去った後に同じ事されてもな。この集落ごと、心をポッキリ折りたいなぁ」
「閣下っ! 後方でゴブリン20とそれを追うオーク5ですっ!」
後方から声があがる。
「間が悪い、速やかに殲滅しろ!」
ミルコが命令すると同時に、
「! 良い事思いついた! 一石二鳥だ! お前らっ! ゴブリンは生かしておけ! オークだけ殺せ!」
パトリックが悪い笑みを漏らして叫んだ。
兵士達は、ゴブリンには刃物を使わずに蹴りなどで痛めつけ、オークのみを斬りつける。
ゴブリンは傷は有るのだが生きている。
が、オークは全滅し、今は解体されている最中だ。
ゴブリンの周りには、兵士達が取り囲んで逃げないように見張っている。
向かってくるゴブリンには蹴り飛ばして中央に戻す。
「解体できました!」
兵が報告すると、それを聞いたパトリックは、
「よし! 内臓や骨とか要らないモノをゴブリンのところに投げ込め!」
と、命令した。
ドサッと、ゴブリンの目の前に、オークの内臓や骨が投げ入れられた。
1匹のゴブリンがキョロキョロしながら、人間が攻めてこないのを確認した後、投げ込まれたオークの内臓を口に入れた。
1匹が食べ出すと、残りのゴブリンもそれに続く。
20匹のゴブリンは今、人間のことなど気にせず、一心不乱にオークの内臓を貪っている。
そして食べ終えた時、20匹のゴブリンの内、2匹がぼんやり光り出す。
兵士達から驚く声が漏れる。
光が徐々に強くなるが、目を背けるほどでは無い。そして光が消えた時、明らかに大きなゴブリンがその場に現れた。
「進化の確率は10分の1か……思ってたより多いかな。ゴブリンだからか? それともどの魔物もそうなのか? いやしかしプーとペーは揃って進化したな。まだまだ検証しないと分からんな」
パトリックがブツブツと呟いた。
申し訳ないですが、書籍用の校正原稿との戦いが始まります。
毎日更新が厳しくなるかと思いますが、大目に見てくだされ。