さらなる理解
その頃、砦にある来客用の部屋には、ソーナリスとミルコ、アメリアがいた。
ミルコとアメリアはソファにグッタリと座り込んでいる。若干顔色が悪い。
「あのくらいで気分が悪くなるなんて、2人ともだらしないわよ!」
ソーナリスが2人に言い放つとミルコが、
「いやいや奥様、普通の人は地面から離れると不安になるものですよ? 見張り台などの高い建物の上に立つ事すら出来ない人もいるくらいですよ? しかも、今回は空の上を飛んだんですよ? 身体を縛られた上で! あり得ない事ですよ?」
ちょっと声が大きめなミルコに、
「良い景色だったでしょ?」
答えるソーナリス。
「景色なんか見る余裕ありませんよ!」
「もったいない、アメリアは見れた?」
と、ソーナリスが話をアメリアに振ると、
「ずっと目を瞑ってましたよ! 見たらダメだと直感しましたから!」
少し怒り気味のアメリア。
「見なくて正解だよ、生きた心地しなかった」
と、ミルコが言う。
「2人ともダメねぇ、いついかなる時も周りを見ないと! 新たな発見があるかもしれないんだから! それにスピードや浮遊感って、普段とは違うから楽しいのに! まあいいわ、今回の事で懲りたら、パットの前でイチャイチャする時は気をつけなさいな」
「はい、浮かれておりました、反省しております」
とミルコが言い、続いてアメリアも、
「私も反省しますけど、アレはやり過ぎでは?」
と、まだ不満げだ。
「アメリア、パットはあれでも手加減してるわよ? ちゃんと死なないようにしてあったじゃない。前はもっと酷いことしてたわよ。身内だから手加減してもらえたのよ?」
「アレで手加減ですか?」
と、ミルコが聞き返す。
「パットの二つ名は?」
「死神……」
「ね? 死なないようにしてる時点で手加減よ。訓練でも死人は出てないでしょ?」
「ちなみに前って何をされたのでしょうか?」
アメリアが聞く。
「うーん、簡単に例えると、ロープで縛った人を馬に繋いで、全力疾走で引きずって遊ぶと言えばどうなるか分かる?」
「はい、理解しました」
「うん、パットだって死神と呼ばれようが人間だし、たまにはキレるから気をつけてね」
「身に染みて理解しました。」
「うん、じゃあ置いてきた兵達が到着するまで、ゆっくりしてなさい。私はパットのところに行ってくるから。あ!私が居ないからって、部屋で変な事しないようにね! したらパットに告げ口するからね?」
「「しません!」」
2人の声が揃う。
ソーナリスが退室すると、
「する元気なんかないよなぁ?」
ミルコが小さな声でアメリアに問いかける。
「元気無いどころか、吐き気するんだけど? ミルコは平気?」
「吐き気は無いが、目眩はする……」
「酷い目にあったわね……」
2人が頷き合った。