軍事行進8
「各員! 周りを警戒しろ! まだ来るかもしれん! ワイリー! ヴァンペルト! そっちはどうだ⁉︎ ウェインは⁉︎」
パトリックが大声で叫ぶ。
その声に兵士達は上空をキョロキョロ見回しだす。
「お館様っ! こちらは息の根止めましたー!」
ヴァンペルトの声が返ってくる。
「こっちも終わったぞー!」
と言いながらウェインがいつもと変わらぬ感じで歩いて来る。
「被害の状況を確認しろ! 負傷者には手当てを!」
パトリックの声に、
「了解であります!」
と敬礼した近くにいた兵士が走っていく。
「手の空いている兵士は、ワイバーンを解体しろ!」
ウェインが部下に指示を出していく。
♦︎♢♦︎♢
負傷者の手当てがほぼ終わり、死亡してしまった兵士は一箇所に並べられ布が被せられる。
数十人の兵士は交代で上空を警戒しているし、残りは解体と積み込みに従事する者や、放った矢を回収する者など、それぞれがやるべき事をやっていく。
「で、被害は?」
パトリックの問いに、
「死者は2軍11名、8軍2名、負傷者は2軍58名で8軍3名です」
ミルコが答えた。
「負傷者のうち、今後も軍務を続けられない者は?」
「2軍の3名は腕を噛みちぎられており、もう無理かと」
「そうか…」
パトリックが呟く。
「お館様、こんな時になんですが、お話が」
「ん? なんだ?」
「お館様がワイバーンに最初の殺気を放った後、お館様のお姿を見失いました。ずっと見ていたのにです! 今まで探すのに苦労した事はありますが、見ていたのに見失うなど、初めてです…私はお館様の騎士として相応しく無いのかもしれません」
悔しそうな表情を見せるミルコに、
「何を馬鹿な事言ってんだミルコ! 俺だって訓練してんだぞ。アレだってそうだ。見失って落ち込むくらいなら、次から見失わないように努力しろ! まあそう簡単に見失わないようになられても、俺の努力が報われないけどな。それにワイリーやヴァンペルト達だって見失ってると思うぞ。なあミルコ、俺はすぐに落ち込むようなヤツを騎士にしたのか? ウチの騎士だと、スネークス辺境伯自慢の騎士だと誰かに胸張って紹介出来るヤツを選んだつもりだったのだが、俺の眼は間違っていたか?」
ミルコの眼を睨んでパトリックが言ったとき、
「スネークス中将! 街道の東より師団規模の部隊接近!」
警戒中の兵士が叫んだ。