軍事行進6
「ミルコッ! ウェインがトドメを刺したワイバーンから矢を引き抜いてこいっ!」
パトリックがミルコを見て叫ぶ。
「了解ですっ! ミルコ隊っ行くぞっ!」
そう言い、ミルコとその小隊が走ってウェインのほうに向かう。
そうこう言っている間に、残りのワイバーン二匹はもう目の前。
「ヤバイっ総員! 矢でも槍でもなんでもいい! とりあえず奴らを叩き落とせ!」
パトリックはそう言いながら自分の槍を渾身の力で、右側に居るワイバーンに投げつけた。
そう、投げた槍が届く距離に2匹は来ていたのだ。
ワイバーンは急降下して兵を足で掴んで急上昇する。
掴まれた兵は口から血を吐く。内臓が潰れたのだろう。
二匹のワイバーンは交互に急降下を繰り返しては、兵を掴んで上空から落とす。
落ちて来た兵に当たって倒れる兵士。負傷者を運び出す兵と、無数に放たれる矢と、投げつけられる槍、そして準備が整ったのだろうバリスタの側に居る兵から、
「中将! どちらに撃ちますかぁっ⁉︎」
と叫ぶ声がした。
「左だぁ! 放てぇぇええ!」
「はいぃ! 目標! 左側ワイバーン! はなてぇぇええ!」
慌てて兵が復唱して、バシィッっと音がして飛ぶ槍程の矢が、上空の左側にいるワイバーンの腹に刺さった。
「よし! 兵は右のやつに集中しろ! ワイリー! ヴァンペルトッ! 各小隊と共に今落ちていったワイバーンにトドメを!」
「お館様! 了解であります!」
ワイリーが走り出し、ヴァンペルトも続く。
兵達の矢の残りがあと僅かというところで、
「お館様! 抜いてきましたぁぁ!」
ミルコが大声で叫びながら戻って来た。鉄製の矢を脇に抱えて。
「よし! バリスタの所に持って行け!」
「了解です!」
ミルコが走ってバリスタを扱う兵の元に急ぎ、手渡したのだが、
「中将! ダメです! 矢が曲がっていておそらく真っ直ぐ飛びません!」
「なんだと?」
「見た目はそうでもないですが、セットすれば一目瞭然です。」
「どれくらいの距離なら当たりそうだっ⁉︎」
「おそらく10メートルが限界かと」
「10メートルか」
パトリックはバリスタで落ちた、他のワイバーンをチラリと見て暫し考える。1本はあからさまに曲がっているし、もう1本は、まだ息の根が止まっていない。
「総員、バリスタより後方に退避!」
と叫んだパトリックに、
「そんな事したら、ワイバーンが後方に行くだけです!」
とミルコが叫ぶ。
「俺が囮になる…」
「そんな無茶な…」
「無茶だろうがなんだろうが、やらねば兵の被害が増える…」
「それはそうですが…」
「いいから全員退避だ! これ以上死なせん! 来いワイバーンめっ」
そう言い殺気をワイバーンに向け放つ。
ワイバーンがその刹那、パトリックを確かに睨んだ。