軍事行進5
2軍と8軍が慌てて全員で弓を構える。
上空に見えるワイバーンは目視で鳩ぐらいの大きさに見えるようになった。コウモリでは無いことはこの距離なら分かる。長い首が見えるのだから。
そしてだんだん近づいてきている。
「各員! 弓の射程に入ってもすぐに撃つなよ! 総員で一斉に矢を放つぞ! 合図を待て! バリスタは別で指示を出すから、発射出来る状態で待てよ!」
パトリックが大声で叫ぶ。
先頭のワイバーンはすぐそこに来ている。およそ100メートル先。
弓矢ではまだ届かない。届いても貫く威力が無い。
「距離50…40…弓矢放てっ!」
その声に、約1000本の矢がシュシュッと空気を切り裂いて跳ぶ。
先頭のワイバーンの身体に刺さる矢や、翼の皮膜を破る矢。
左右の翼に穴が空き、上手く飛べなくなったワイバーンが地に落ちていく。
ズドドッと音をたてて地面に激突するのを確認すると、
「ウェインッ!」
と、パトリックが叫ぶ。
「承知!」
と駆け出すウェインを横目に、
「バリスタッ! 次に近いワイバーンに向けて発射! 兵員は、2射目用意!」
その声と同時にバリスタから巨大な矢が発射され、ズブッという音と共に、2番目に近いワイバーンの胴体を貫いた。
がすぐ後に3匹目。
「弓矢! 放てっ!」
パトリックが叫ぶと、少しタイミングがバラけたが、なんとかワイバーンに矢が当たる。
当たったワイバーンは墜落してはこないが、必死に羽ばたき、上空高くに逃げようととするが、上手く上昇できないでいる。
「バリスタ、矢はまだあるかっ?」
「あと2本です!」
「もう1本をあの手負いのワイバーンに放て!」
「了解ですっ!」
「弓矢用意! まだ来るぞ!」
そう言っている間にバリスタから第二射が放たれて、これも胴体に命中、くるくると回りながらワイバーンが落ちて行く。
パトリックの目には、あと2匹のワイバーンが見えていた。
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ウェインは、墜落して暴れる体長3メートルぐらい、翼を広げると横幅7メートルはあろうワイバーンに駆け寄ると、バサバサと振り回される翼を避けて接近を試みていた。避けては槍で斬りつけまた避ける。
そうこうしている間に、なんとか片方の翼を斬り落とす。
斬り落とした右の翼の付け根から血が吹き出している。その傷目掛けて、槍を突き刺した。
槍を捻るように抜きギャアギャアうるさい口の中に、槍を叩き込むように何度も突き刺した。
ワイバーンが、血を吐いて崩れ落ち、そのまま動かなくなると、2匹目、胴体をバリスタで貫かれて落ちてきたワイバーンの息の根を止めるため、走り出した。