いや軍務中
「と、とりあえず牢を破壊するので、下がって下さい」
パトリックは腰の剣を抜きながら言う。
3人が下がったのを確認し、2度、剣を振る。
鉄格子が数本、音を立てて倒れた。
「此度は助けて頂き、感謝致します。この御礼は必ず」
カルロスと名乗った老人が言う。
「任務ゆえ、お気にされぬよう」
パトリックが答える。
「いえ、我が主人には、ちゃんと報告致しますゆえ」
「いや、本当に、任務中の行動ですので」
「先程、リグスビーと名乗られましたが?」
(ああ、うち、評判悪いもんなぁ。自業自得だけど)
「はい、あのリグスビー家です。恥ずかしながら。三男のパトリックと申します。まあ、家からは追い出された様なものなので、あの家には気遣い無用です!」
ここは、ちゃんと言っとかないとね。
「では、パトリック様個人に感謝を」
「いえ、だから任務中ですから」
ここでおとなしかった少年が、
「パトリック様には、侯爵家から感謝を受け取って貰わねば、侯爵家としての面子が立たぬのです。もちろん部下の方々にも御礼をお渡ししますが、パトリック様は隊長でらっしゃるのでしょう?」と言う。
(ほう、小さいのになかなか利発な少年だ。さすが侯爵家。というか、声を聞くに、少年で間違いないな)
などと思いながらパトリックは、
「一応、中隊を預かって居ります」
と答える。
「その若さで中隊長とは、なかなか立派ですな」
と、カルロスが言う。
「では、やはりパトリック様には、正式に御礼しなくては。軍務中とはいえ、助けられた事実は変わりませんので!」
あまり断り続けるのも失礼かと思い、
「わかりました、最低限で結構ですので」
と、頭を下げる。
「よし、街道まで戻るぞ! 奴らの武器や、略奪品は没収するから、荷物をまとめろウェイン、指示を頼む!」
「了解致しました! パトリック少尉!」
侯爵家三男の前だからか、改まった言い方をしたウェインに、苦笑いで答えたパトリックだった。