軍事行進2
さて、そんな事を言っていた数日後、まあ、軍事行進当日である。
王国軍の施設から華々しく馬や馬車が出て行き、その後ろを歩兵が続く。
最初は第1軍である。サイモン大将が馬に乗り、道で手を振る王都の民に、にこやかな笑顔で手を振り返す。
鎧は金を各所に配した豪華な金属鎧である。
兜は顔の見えるタイプだ。
1軍が北の門を目指して進んでいく。
次は普通2軍なのだろうが、何故か3軍。
ガナッシュ中将も豪華な金属鎧で馬に跨る。
南門を目指して行進していく。
次こそ2軍。
先頭はなんとウェイン・サイモン中佐。
義父の鎧よりは質素だが、充分豪華と言える金属製の鎧で馬に跨ってる。
東門に向かって凛々しく進む。
声援が一際大きいのは、若く逞しいイケメンだからだろう。
そして行進の最後尾に控えるのは、黒く大きな馬に跨る男。
赤い革鎧と、両肩には銀色に輝く蛇の頭、そして髑髏の兜。
右手の籠手には、とある家の家紋が浮かび上がっている。
王都で暮らす民にとって、もはや恐怖の対象。
罪人を自分の使役する蛇の魔物に食わせる貴族。
民が蜘蛛の仔を散らすように去っていく。
「死神貴族だっ! 逃げろ! 蛇に食われるぞ!」
そう叫びながら。
「ふむ、逃げ惑う民を見ながらの行進か、なかなか爽快だな」
パトリックが呟くと、その横に居たミルコは、
「あれを爽快と言えるお館さまの心の強さが羨ましいですよ、私なら引きこもりたくなりますね」
と、呆れていた。
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行進の様子を、王家の家紋入りの馬車の中から見て、うっとりしていた少女、いやもうすぐ成人なので女性と言うべきか。
言わずと知れたソーナリスだが、パトリックが見えなくなったとたんにくるりと振り返って、
「パトリック様カッコ良かったわよねぇ! 鎧も似合ってて、醸し出す雰囲気も良かったし、逃げ惑う民がまた良い演出になってたし!」
「私は隣のミルコ騎士爵様の渋さを推しますね!」
「なになに! アメリア! あなたミルコさんが好きなの? 確かに渋いイケメンよね。ちょっとその話詳しく! なんならパトリック様に言ってとりなしてもらうわよ‼︎ さあ白状なさい!」
三人よれば姦しいとはよく言うが、2人でも姦しいようだ。