鎧再び
パトリックは戸惑っていた。
いつものように大量の護衛を引き連れて、ソーナリス御一行がスネークス辺境伯邸に来たのだが、大きな木箱が2つ、馬車から下ろされた。
屋敷に運び込んで、
「では、まずこちらを」
と、1つ目の木箱が開けられると、そこには以前ソーナリスに預けた、ソーナリス作、パトリック用の式典用鎧。
式典用なのに実戦で動作チェックして、鎖が錆び錆びになった鎧だ。
鉄の鎖だった箇所が、軽銀に変更され、更に緑に塗られている。
兜も髑髏の顔部分が、上にスライドする方式に変更され、水分補給しやすくなっている。
「どうでしょう? 式典用は式典用として割り切って、小変更にとどめました」
とは、ソーナリスの言葉。
「という事は実戦用もお作りに?」
と、恐る恐る聞くパトリック。
「はい! 基本概念は同じく、動きやすいように革鎧を基本に、頭部、胸部、肩と肘から先、ブーツの前側を金属で強化しました。両肩のぴーちゃんの顔は少し小さめに変更して、ぴーちゃんの胴体は軽銀のみで構成し軽量化。肘から先の籠手は革の中に鉄の板を挟み込む事にして、左手側だけは鉄の厚板が外に出てますが、これは盾と割り切ってください。
兜は、実戦用は強度の関係上、ドクロの下顎の箇所だけ跳ね上げです。ブーツは前側とつま先部分に鉄を挟んでありますので、どんどん敵を蹴りつけてください! で次は武器のほうですけど、鉈剣、刀、ナイフの柄はぴーちゃんをイメージしたものに作り替えまして、槍は、穂先にぴーちゃんの刻印を彫りました。
あと、新しい武器として、大きめのナイフと鉈を足して割ったような物を作りました」
と、一気に説明されてしまう。
実戦用は多少派手さを抑えてはいるようだ。
銀の頭と軽銀の体のぴーちゃん2匹と、鉄の板にもスネークス辺境伯家の家紋とぴーちゃんの刻印が彫られてる。
そしてナイフと鉈を足したような武器、これはパトリックは見覚えがあった。
(大きめのククリナイフじゃん)と内心思うが、口には出さない。
そして始まる鎧ショー。
たんにパトリックが装備してソーナリスに見せるだけだが。
だが、流石というかなんというか、パトリックの動きを阻害する事はないし、大きさもピッタリ。
まさにオーダーメイドである。
「ありがとうございます!」
パトリックはお礼を述べて、ソーナリスの頬に軽くキスをした。
茹で蛸のようなソーナリスが出来上がったのだった。