主役は誰?
「よう! パット」
と、パトリックに声をかける男がいた。まあパットと呼ぶ人間はこの会場に2人しかいないし、1人は一世一代の大勝負の真っ最中なので残るは、
「お! 本日の主役その2のウェイン」
と、パトリックが茶化す。
「なんだよ、その2って!」
「だって1番の主役は、エミリア嬢だろ? あ、エミリア夫人か。」
「ああ、確かにな。だが、2番目も怪しくなってきたな、クラリスが2番か、デコース殿が3番か? なら俺は4番?」
クラリスとデコースの方を見ながらウェインが言う。
「いや、流石に2番だろ」
「かなぁ。まあ、クラリスが幸せになるなら良いんだけどよ。あの子良い子なんだよ。本当に!」
「デコース兄も良い男だぞ。ちょっと女性に免疫無いだけで」
「パット、お前のほうは順調か?」
「ああ、多分順調なんじゃないかな。怒らせたりもしてないし、しょっちゅうウチの屋敷にも遊びにくるし。」
「ほう。あの蛇が居る屋敷にか。」
「うちのぴーちゃんをかなり気に入ってるぞ」
「さすが殿下。器が違う」
「まあな」
「ところで、左右の家を買い取って、敷地広げて建て増ししてるんだって?」
「ああ、なんか右隣は取り潰しで、左隣りは『あんな魔物が居る家の隣になんぞ住んでいられるか!』って言って引っ越したから、ちょうど良いと買い取った。ほらウチ人増えたし、これからも増えるし」
スネークス辺境伯の屋敷は、前に比べて人数がかなり増えている。理由は、スネークス領軍が警護に来ている事、間者の人数が増えたことによるその宿舎が必要になった事(取り潰しになった家の間者をアインが大量にスカウトしてきた)。それに伴い宿舎で働く者やなんやで、かなりの大所帯になっている。
さらに結婚後は、ソーナリス付きの侍女や警備兵も来る予定である。
「なんか見たことない変わった建物だって噂だけど?」
「そうか? まあ出来上がったら呼ぶよ」
「怖いもの見たさで行くわ」
ウェインが笑いながら言うのだった。