叫び
デコースの視線の先に居たのは、
年齢18歳ぐらいだろうか?
身長160センチほどの、少し骨太だが、引き締まった身体付き。
真っ直ぐに伸びた長く茶色の頭髪に、緑の瞳。
大きめの胸。
そして、立派に伸びた髭!
そう、ドワーフの女性だった。
この女性、名をクラリス・サイモン。
そう、サイモン侯爵家の第三夫人の子で、サイモン家の五女である。なので、正確にはドワーフと人族とのハーフである。
長い顎髭は綺麗で艶の有る金色に近い茶色の直毛で、それが胸の立派な二つの双丘の谷間に吸い込まれていた。
以前、貴族にもエルフやドワーフ、獣人の血を受け入れる家が有ると書いたと思うが、まさにサイモン侯爵家は、その最先端。
正妻は人族(王の妹)、第二夫人も人族、第三夫人はドワーフ、第四夫人は人族、第五夫人は、獣人(狼系)
である。(第五夫人は、男児がいないサイモン家に、なんとか男の子をと、男兄弟の多い家系の獣人から選んだ)
「デコース兄、私は良いと思う。好みは人それぞれだしね。では、行こうか?」
「いいいぐってどこに?」
かなり噛んだデコース。
「どこって、クラリス嬢のところですよ! 私はサイモン侯もウェインも良く知ってるので、話くらいは取り付けますよ。後はデコース兄しだいですけどね」
「そんないきなり…」
「デコース兄! このまま結婚もせず、子供も得られなければ、ブロース兄に家督を譲って近衛騎士団で一生過ごすことになりますよ? まあそれも1つの人生ですけど、人間一度くらいは人生かけて当たって砕けるつもりで、女性にアタックする事も必要でしょう?」
「そ、それはそうなのだが、この年まで1人なので自信が…」
「自信なんか必要無い! 気合いと一歩進む勇気だけでいいんです! ほら! 行きますよ!」
そう言ってパトリックはデコースの左手首を掴み、大きな体のデコースを引きずるように、クラリス嬢の方に歩いて行くのであった。
「まてまてパット、心の準備がぁぁぁぁあ!」
デコースの心の叫びは声に出ていた。