のし上がった
王国軍史上初の10代での中将昇格。
話題になって当然であるが、その中には勿論悪評も入る。
スネークス家の評判の主な内容は、
捻くれた性格の当主
残忍な性格と人食い魔物を使役する死神
やり手のクソガキ
金の亡者
酒を操りし者
大したことない癖に運でのし上がった奴
親殺し
だいたいこんなところだろうか。
良い評判が少ない。
というか悪評ばかりである。
が、そんな事を気にするパトリックではないし、気にしていたら貴族社会など生き延びられない。
現代のBLACK企業なんか甘っちょろく思える、過酷な24時間任務や、足の引っ張り合いに、嘘やデマの蔓延、それがこの世界の貴族社会だ。
さて、のし上がったと言えば、スネークス家の騎士の中で2人が男爵にのし上がった。
正式なスネークス派の形成である。
新男爵達にとって実家よりも、騎士爵を与えてくれた家のほうが大事である。今後、仮にスネークス家と実家が対立したとすると、スネークス家に力を貸す事になる。
貴族社会の暗黙の了解である。
これが実家に味方すると、騎士にしてもらった恩を仇で返した家として、周りの貴族から取引を停止されてしまうくらいのタブーである。
ワイリーとヴァンペルトは男爵として、スネークス辺境伯派閥の一員となったのだ。騎士爵よりもさらなる貢献も要求される立場だ。
領地も隣であるが、領地を拝領した事で舞い上がってる2人に、パトリックからキツイ質問がでる。
「ワイリー、ヴァンペルトもだが、2人の領地は農耕には向かない、どう運営していくつもりだ?」
「「えっ?」」
「考えて無かったか?」
2人は顔を見合わせている。
「なぜ、旧カーリー男爵、エージェー男爵がウエスティンに金を借りたか考えなかったのか? 収穫が少なくて、納税だけで金が消えたからだ。その他領地警備だなんだの金が無いから、借りる羽目になる。おそらくベンドリック宰相あたりの企みだろうな。俺の金を減らす算段だろ。まあいい、助けてやるから任せとけ。ベンドリック宰相の悔しがる顔を見てやるぞ…」
そう言ってニヤリと笑ったパトリックに、ワイリーとヴァンペルトだけでなく、その場に居た者達が、背筋に寒いモノを感じた。
誤字脱字報告、いつも感謝しております。
ブクマ二万五千を超えたました。ありがとうございます。