辺境伯
王城に多くの人が集まっている。
この日、山岳部族の侵攻戦の褒賞や叙勲、それと先の叛乱による褒賞叙勲、そして陞爵の儀が執り行われている。
功の小さき者から呼ばれるが、それでも活躍した証なので、呼ばれた者達は一様に嬉しそうである。
一通り褒賞叙勲が終わり、いよいよ爵位の件となると、皆が静まり返る。
爵位が上がる。
それは貴族にとってこの上ない名誉である。
先ずは山岳部族戦での功による陞爵。
騎士爵から男爵になる者、かなり嬉しそうである。
男爵から子爵になる者、子爵から伯爵になる者。
ここでスネークスの名が出ないことに、一部の貴族が不審に思った。
次に叛乱の件。
先ずは身を挺して王家を守ったカナーン男爵家だが、子爵に任じられた。
領地は元の領地と、隣り合う領地を与えられた。
ここで領地持ち貴族の説明を。
領地持ち貴族には、いくつか種類がある。
元々住んでいた場所を領地として与えられた家。
これはカナーン家や、旧リグスビー家、アボット家などが当てはまる。
元々地域での豪族だった家だ。
そして、陞爵により領地を与えられた家。
王家直轄領の一部を、功績により与えられたので、その地に縁故は無い。
が、その領地に根を張り地域の発展に努める家。
残るは、王家直轄領を与えられたが、特に何もせずに税を集めるだけの家。
このような家は、転封に素直に応じるので、王家としても扱いやすいので、特に咎められる事も無い。
カナーン領の横の領地は、このような家だったので、そこがカナーン領に追加された訳だ。
発表は続く中、パトリックに関係が有る者を挙げると、ワイリー騎士爵が、男爵に。
ヴァンペルト騎士爵も男爵に任命された。
元近衛騎士団長を倒した功である。
領地は、西の旧カーリー男爵領をワイリーが、旧エージェー男爵領をヴァンペルトが拝領となった。
スネークス領と近いのは王の采配か、宰相の企みか。
アボット家は領地の一部が山岳地域に隣接していたので、そこを領地として与えられ、辺境伯に任じられた。
そして、スネークス家は、
「先ず山岳部族戦での功が一つ、叛乱での功が二つこれにより、旧ウェスティン領を領地として与え、辺境伯に任ずる。また、王国軍中将に任命し、2軍及び8軍の司令を命ずる」
どよめく城内。
10代の中将の誕生の瞬間であった。