改良のお願い
パトリックはソーナリスに会うために移動している。
その横にはミルコも居る。大きな荷物を背負っているが。
「ソーナリス殿下、鎧の事なんですが…」
挨拶もそこそこにパトリックがきり出す。
「何か不具合でもありました?」
ソーナリスが紅茶を飲みながら聞き返す。
「いえ、動きを阻害する事も無かったので、問題無いかと思っていたのですが、ミルコ、鎧を殿下にお見せして」
「はい、お館様。殿下、こちらを」
荷物を解いたミルコ。
そこには、
「うわぁ、鎖が錆びてますね…」
ソーナリスが呟いた。
「はい、どうも返り血と、森の湿気がまずかったようで、鉄の鎖があっという間に錆びてしまいまして。水で洗い流せば良かったのかもしれませんが…」
パトリックが申し訳なさそうに言うと、
「いえ、戦場で洗う暇など無いでしょう? 返り血とか、完全に想定外でした。素材から選び直します。後は何かあります?」
「兜なのですが、顔の部分をパカッと開くようになりませんかね? 水分補給のときに、いちいち外すのが面倒で…」
「なるほど! やはり使ってみないと分からない事ってありますね。分かりました! 開けた時に、その状態を保持できる方が良いですよね? その方が飲みやすいし。ということは、ロック機能を追加して、開けた時もカッコ悪いのは嫌だから、モチーフは何にしようかな? うーんでも、そうすると分厚くなるか? でも、重くなるのは嫌だしとなると…」
考え出したソーナリスに、まずい事言ったかもしれないと思ったパトリック。
だが、まだあるのだ。
「あと、ブーツですが、爪先の部分を金属で補強とか出来ますか? 敵を蹴る時に良さそうなので」
「あ、それなら可能ですよ! 金属は見えた方が良いです? 隠す事も可能ですけど?」
と言われて少し思案してから、
「では、隠す方で」
と答えた。
「わかりました! 色々イメージが湧いてきましたよ〜。いったん鎧一式を預かりますね! ついでに武器も作っちゃおうかしら! パトリック様は剣鉈と刀とナイフがメインですよね? あ、一応槍も必要か! 手裏剣を入れる箇所も作っちゃおうかな! 楽しくなってきました!」
テンション上げ上げソーナリスに、どう向き合って良いのか分からないパトリックであった。
パトリックはソーナリスの相手に忙しかったからか、奥でミルコとソーナリスの侍女アメリアが、楽しそうに紅茶を飲んでいたのに気が付かなかったのは、仕方ないだろう。