森で3
皆が寝静まった頃、パトリックは動き出す。
漆黒の闇の中、パトリックの目にハッキリ映る焚火。待ち伏せに出ていた毒蛇部隊達と合流し、経過報告を聞いてから、砦に帰るように言う。
「テリヤキバーガーモドキ作って置いてきたから、帰って食えよ」
「やった! あれ、冷えててもうちのカカァのとは、雲泥の差だからな!」
「おい、声がデカイぞ」
「おっと、すまん」
「じゃあお館様、戻ります!」
「気をつけてな」
兵が帰るとパトリックは、
「サイレント」
と、小さく呟く。
まるで街中を歩くように敵兵の間を抜けて歩く。
パトリックの右手にはバケツが一つ。
なみなみと入った水に焚火が映るが、そのバケツの水を、パトリックは焚火にかける。
ジューッと音を立てて焚火が消える。
まさに暗闇。
漆黒の世界。
だが、パトリックの目には、周りの人が見える。
いや、周りの人の温度が見える。
喚く兵士達を1人、また1人と切り捨てていく。
淡々と、冷静に喉を切る。
生き残る事がないように、だが、苦しく後悔しながら死ぬように。
誰を相手に喧嘩を売ったのか。
誰の命を狙ったのか。
その場の兵士を全員切った後、パトリックは呟く。
「あの世で本物の死神に聞いてこい。パトリックは死神だったのか? とな」
その後戻ってぐっすり寝たパトリックは、陽が上ると同時に朝食を配る。
内臓のスープとパンだ。
そして、
「よし、では、これより作戦を伝える。毒蛇部隊は闇蛇隊と協力、と言うか、毒蛇部隊の隠密術を闇蛇隊に実戦で教えてこい。そして闇蛇隊はそれを吸収し、偵察でヘマした時、森に逃げて隠密術を使えば生還率が上がるはずだ。いいか、毒蛇も闇蛇もスネークス家の仲間である。互いに協力し、信頼して作戦にあたること! そして各騎士達は、その模範となる事! アインもエルビスに教えて貰ってこい。
ワイリー、ヴァンペルト、ミルコは8軍で習った事と同じだが、唯一違うのは、毒の使い方だ、エルビスに付いて行ってこい」
「それではお館様の護衛は?」
「ライアン殿に頼むよ」
すかさずライアンが、「承った」と声を出す。
「よし、行動開始!」
皆が動き出す中、パトリックはライアンの質問に答えていた。
「毒とは?」
「ぴーちゃんの毒さ」
「毒の種類は?」
「神経毒ってやつ」
「どんな症状がでる?」
「んーと、簡単に言うと筋肉が動かなくなって、呼吸困難になるか、心臓が止まるかかな」
「人の場合、どれくらいの量で死ぬ?」
「針に塗って刺せば、数分後には」
「猛毒ではないか!」
「そだよ」
「いつ、誰に検証したのだ?」
「屋敷に忍び込んできた盗賊相手に」
「その死体は?」
「ぴーちゃんの腹の中」
「兵が間違って使用したらどうするのだ⁉︎」
「管理はエルビスが厳重にしてるよ」
「戦闘中に毒針に触れたらどうするのだ?」
「そうならないように、楽な戦いで使って慣れさせようかと」
「実戦練習か…」
「喧嘩を売る相手が悪かったよね、アハハ」
「この状況で、キャンプして楽しんで笑ってられるそなたの心臓、魔道具か何かか?」
「違うと思うけど、確かめた事ないからなぁ」
「はぁ、相手が可哀想になってきた」
「ええ⁉︎ 酷くない?」
「そう思うなら少しは不安な顔でもしてみたらどうだ?」
「不安な顔って、不安でもなんでもないんだから、できる訳無いしなぁ」
「やはり相手が、可哀想だ…」
ライアンが吐き捨てるように言った。