森で2
ライアン目線です。
私、ライアン・アボットは森の中にいる。
スネークス伯爵に拉致、もとい無理矢理連れて来られたからだ。
スネークス伯爵達は、森の中央付近に急造の砦を作っていた。
簡単な柵があるだけだが。
スネークス伯爵の姿だが、なかなか理解し難い格好である。
黒の軍服はまだいい、赤い革鎧?
発見してくれと言っているようなものだ。
銀色の蛇のモチーフ。
スネークス家だからといって、鎧に付けるか?
あれにまだ、髑髏の兜まであるらしい。
「よし、こんなもんだろ。じゃあ、飯にしようぜ。オークも2匹狩れたことだしな!」
スネークス伯爵の楽しそうな声に、周りも楽しそうな空気である。
「スネークス伯爵、命を狙われてる危機感というものは無いのか?」
私は呆れた声で、スネークス伯爵に問うが、
「ライアン殿、あんなカスに負ける訳ないし、来る途中に罠もいっぱい仕掛けたし、ここまで来れても、毒蛇と闇蛇も居るから大丈夫ですよ。まずは腹ごしらえしてから、皆に命令を出しますよ」
そう言うスネークス伯爵の口元が、あやしく笑う。
スネークス伯爵がいそいそと調理する。
火の調整やら包丁の使い方が素晴らしいのが納得いかない。
ただ、人のそれに見える丸焼きを見て、
「オークの丸焼きって、見た目悪過ぎないか?」
私の素朴な感想であるが、
「ええ? 美味そうじゃないですか! なぁ? みんな?」
スネークス伯爵が答え、
「はい! ヨダレ出そうです!」
「滴り落ちる脂がたまりませんなぁ!」
「ライアン殿は、これの美味さをまだ知らないからですよ! お館様の味付けは最高ですよ!」
「途中で待ち伏せの役目のやつは、出来立て食べれなくて残念だな。まあ、冷えても美味いけど出来立てと比べたらなぁ」
「確かに!」
と、騎士や兵達が、私に向けて言う。
焼けた外側を削いで、パンに挟んでタレを塗って、スネークス伯爵特製ハンバーガーモドキとやらの完成である。
皆が順番にそれを受け取る。
私も受け取り、意を決して齧り付く。
「う、美味い! なんだこれ! なんとも言えぬ甘辛い旨み! トロッとしたタレは何で出来ているのだ? 初めて食べるぞ!」
つい驚きの声をあげてしまった。
「どうです? お館様特製、テリヤキハンバーガーモドキって言うらしいですよ! 美味いっしょ!」
近くにいた兵が、自分の事のように自慢する。
だが、確かに美味いのだ!
私は自分の分をあっという間にたいらげてしまった。
外側は削がれたが、中央部はまだ火に炙られている。
「外側とはまた別の旨さがあるので、もう少し待っててね」
スネークス伯爵が無邪気な表情で、骨の周りの肉に、何かを振りかけている。
「今度は、スパイシースペアリブって言うやつですよ。骨の周りの肉って、美味いんですよ! お館様に言われるまで、骨の周りの肉なんて捨ててましたからね。もったいない事してましたよ、アッハッハ」
骨の周り⁉︎ そんな処食べた事すらない。
これもまた美味であった。
その後、横隔膜? とやらを煮込んだスープも振る舞われた。
これも初めて飲むスープで、肉なのだが、少し歯応えが違うのと、味噌とやらを使ったと言っていた。
トンジルと言うらしい。
初めての味に満足して、その日はテントで寝た。
ああ、楽しいキャンプだなぁ
って、違うし!
命を狙われてる本人が食事作るキャンプってなんなの?!
皆さんの地域では、トンジルですか?ブタジルですか?
豚肉の入った味噌スープ。