出る杭は打たれる?
屋敷に戻ったパトリックは、ことの詳細を使用人や各騎士に告げる。
アストライアが、
「お館様、屋敷の警備を増やしますか?」
と、お伺いをたてるが、
「いや、ここでやるつもりは無い。警備はこのまま。場合によっては、ぴーちゃんを前面に押したてろ。アイン、闇蛇隊を招集! エルビス、毒蛇部隊に第1種戦闘配備。例の物の使用もあり得る! ワイリー、ヴァンペルト、ミルコはキャンプの用意!」
「「「「「キャンプ?」」」」」
「ああ、森で楽しく遊ぼうじゃないか」
何かを閃いたパトリック。
その後屋敷に来客有り。
「お館様、ライアン殿がお越しです」
「ん? 分かった、お通ししてくれ」
「はっ!」
ガチャと開いたドアから、ライアンの姿が。
「スネークス伯爵、話は聞いた…というか、貴族中に広まっている。どうするつもりだ? なんならうちの兵も貸すが?」
なんとも神妙な顔のライアン。
「やあ、ライアン殿、もう広まったの? 陛下も人が悪いなぁ」
「いや、広めたのはスタインの奴だ。目の上のタンコブ、スネークスを叩くチャンスだと、中立派連中にふれ回ってる。あと、スラム街にも、『貴族を堂々と殺すチャンスだ、殺した者には金貨1枚やる』と言って人を集めてるぞ」
「へぇ、カスの癖に悪知恵は働くのな。じゃあ屋敷に人だかりができる前に、立札でも立てとくか!」
「何をする気なのだ?」
「うーん、色々だけど、あ、一緒に来る? ライアン殿なら腕も有るし自分の身は守れるでしょ? 楽しいと思うよ!」
「我が身くらいは守れるが、どこに行くのだ?」
「森でキャンプだよ!」
「キャンプ⁇」
慌ただしくスネークス家に運び込まれる食料、それを各員が大型リュックに詰め込み、何台も馬車が屋敷を出る。王都の外にある森を目指して。
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スタインは屋敷の売却を済ませ、平民街に小さな家を購入、妻と息子をそこで暮らすように言い、かき集めた金のほとんどを置いて、家を出た。
杖を使いながら、歩く姿は痛々しいが、その顔は復讐の念が滲み出る。
付き合いのあった家を訪ね、反スネークス同盟を持ちかける。
スタイン家として、堂々と攻撃許可を貰ったのだ、その利点を最大限に発揮するため、スタインに雇われた体で、各家が協力してスネークス伯爵家を潰す。
出る杭は打たれる、それは貴族の中でも同じである。
急に出てきたスネークスを心良く思わない貴族は多い。
王に近い者達はそうでもないが、パトリックに間者を潰された家などは、特にそう思っている。
そして、スタインの誘いに乗る貴族が、それなりに存在したのだった。
かなりの数の兵がスネークス邸の前に押し寄せた時、屋敷の前に1つの立て看板があった。
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パトリック・フォン・スネークスは、王都の外の森にいる。マヌケに見つけられるかな?
見つけた者には金貨1枚進呈しよう。
ただし、殺されずに戻れたらな。
腕に自信の無い奴は帰れ。
死ぬ覚悟の無い奴は帰れ。
家族の有る者は帰れ。
攻撃してきた時点で、家族の同意有りとみなし、家族も攻撃対象とする。
スタイン、お前の家族の居場所、もう知ってるぞ?
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と、書かれていた。