アインの笑み
アイン達が王都のスネークス邸に帰還し、事のほどをパトリックに報告する。
「話は分かった。とりあえず夫人の使い方だが、良いことを思いついたから、準備しよう」
ニヤリと笑ったパトリックの顔に、アインは一瞬身震いした。
それはエルビスも同じであった。
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「スネークス伯爵家から使者だと?」
スタイン男爵が執事に聞き返す。
「はい、しかもその使者があのアインです。いかがなさいます? ウチの間者がバレたのかと」
執事が言う。
「アインめ、しくじっただけでなく裏切って、あの若僧についたのか! 忌々しい! 何が狙いか気になる。一応会っておくか、今はどこに?」
「一応、応接室に通してあります」
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「お久しぶりです、スタイン男爵閣下」
アインがソファに座ったまま、にこやかに言う。
その表情に苛立つスタイン男爵は、
「この裏切り者がっ! 失敗しただけでなく奴に尻尾振るとはな! それでいったい何の用だ! 貴様のような間者崩れと話す暇など無いのだぞ!」
と言うと、
「間者崩れとは男爵閣下と言えども失礼ではありませんか? 一応改めて名乗らせて頂きましょうか。
スネークス伯爵が騎士、アインです。以後、お見知り置きを」
「な、なに⁉︎」
「先日、スネークス伯爵閣下より、騎士爵を賜りました。王家より発表されているはずですがね?」
「いちいち騎士程度まで目を通すものか! それよりも何用だ? 間者の事など知らぬぞ!」
新たな貴族が増えた場合や陞爵した場合などは、王家より書類が各貴族に配布されるのだが、スタイン男爵は見ていないようだ。
「何も言ってないのに、間者とか言ってる時点で認めたようなものですがね。まあ私が直々に尋問して、スタイン男爵家に雇われたと言いましたがねぇ」
「知らん! 賊の戯言など証拠にならんぞ!」
「まあ良いでしょう。では我が主人より言伝です。
スタイン男爵に、最高のプレゼントを用意した、是非我が家にお越し頂き、プレゼントを受け取って頂きたい。
との事です。なお、プレゼントの内容は言えませんし、お越しになるなら護衛を何人連れてきても構いません。あと、私からの助言ですが、来ないと後悔しますよ? では用件は以上です、失礼します」
そう言いアインはソファから立ち上がる。
スタイン男爵を小馬鹿にした笑みを残して。
「あのガキ、私を見下したような目をしおってからにっ!」
「どうされるおつもりで? スネークス邸に赴きますか?」
「私を馬鹿にしたあのガキ共々、目に物見せてくれるわ! 兵を集めろ! いくら連れてきても構わんと言ったのはヤツだ。数で圧倒してやるわっ!」
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「お館様、言いつけ通りにいたしましたが、良かったのですか? スタイン男爵家を我が屋敷に招いて」
アインの疑問にパトリックは、
「ん? 屋敷の中に入れる気はないぞ?」
「え?」