衝撃のライアン
最悪の気分で応接室に戻ってくると、父がニヤニヤしていた。
コナンから内容を聞いて知っているから、見なかったのは分かるが、ニヤニヤ笑っていたのが腹が立つ。
「父上、あの尋問は父上も見た方がよろしいかと思いますが? 聞くのと見るのとでは大違いですぞ?」
と言うと、
「ライアン、そう怒るな。見たいと言ったのはお前だろう」
「確かにそうですが、戻ってきたときにその表情は少しね」
「いや、珍しく顔色が悪かったのでな! 少し面白かったのだ、許せ許せ。代わりと言っては何だが、お前に良い報告をしてやろう」
父はニヤリと笑い、
「お前の婚約が内定したぞ」
と、爆弾発言を放った。
「父上! いきなり何を! しかも何故今? 同盟とは言え、他家で話す事ですか⁉︎ だいたい私は結婚する気は無いです! 心に決めた方以外と結婚など!」
私は心に決めたあの方以外と結婚などする気は無い。
「まあまあ、ライアン殿、落ち着いて落ち着いて」
スネークス伯爵が言うが、その表情が少しおかしい。
何か笑いを噛み殺すような…
「ライアン、クロージア殿下との事を陛下がお認め下さった!」
へ?
「え? いま少し聴き間違えたようで。陛下が私とクロージア殿下との婚約を認めて下さったと聞こえたのですが?」
「うむ、そう言ったな」
ああ、そう言ったんだ…
「エェエエッツツ‼︎」
思わず叫んでしまった。
「いや、各派閥とのバランスとか、貴族同士の力関係とか、うちは程よい距離とか、色々問題があったでしょうにっ!」
そう、前にそう言って父に断られたのだ。
「派閥問題は、反王家派がほぼ壊滅したのと、第二王子派のレイブン侯爵一派没落により、王家派と中立派のみ。
陛下は、王家派に報いるとの仰せだ。
力関係で言えば、ウェスティン、レイブンと侯爵が減ったので、少し力のバランスを取るべく考えるとのお言葉だ。
程よい距離は周りの距離によって変わるものだ。
王国は北部の山岳部族を取り込んだ。
ならばその変化に柔軟に対処しなくてはならん。
それに備えるためには、我が家の影響力の増大を図る。
同盟関係であるスネークス家と歩調を合わせる必要もある! 何か質問は?」
父が畳み掛けるように言い放つ。
確かに言っている事は理解もできる。
動揺する私にスネークス伯爵が、
「将来の義兄殿、おめでとうございます」
と言った。