ライアン、パトリックと面会
屋敷の中から拍手が聞こえる。
「お見事です、流石はアボット伯爵の御子息。初めまして、パトリック・フォン・スネークスです。以後お見知り置きを」
そう言う黒髪に黒い瞳の細身、顔はまあ整っているほうだろうが、少し根性が捻くれてそうな男。
この男がスネークス伯爵か。
「し、失礼、アボット伯爵家が長男、ライアン・アボットです、スネークス伯爵」
慌てて頭を下げる。
年下だが、れっきとした伯爵家の当主なので、これが礼儀である。
この普通を装う男が、残虐非道の死神か。
この男に敵対した貴族の哀れな最後は、報告でしっかり聞いている。
魔物に食べさせたとか。なるほど、あの蛇の魔物に食わせたのか!
それをショーにして見せたと聞いた。その売り上げは我が家に全て渡したとか。金では釣れないと言うことか。
父上も人が悪い。中途半端に情報を絞るから、点と点が結びつかなかったが、ようやく繋がった。
アボット家は情報を集めるのは得意だが、武力の方はイマイチ。
それを私が変えようとしていたが、兵はなかなか育たない。
それをスネークス家で補うつもりか。
それで同盟か。
悪評高い家だが、我が家も似た様なものだしな。
鉄狐の名は、我が家からの情報によって処分された家からのやっかみだからな。
その後、スネークス伯爵家の応接室にて、軽く酒を飲みながら、チェスをしながらの会談となった。
流石考案者! 1度も勝てない。
酒もスネークス領を好景気に導いた、ウイスキーとイネッシュ。
我が領でも交易により流通していて、ドワーフによる買い占めで問題になるほどの、かなり美味い酒だ。
「そう言えばコナンは今日は来てないので?」
唐突にスネークス伯爵が父に聞いた。
コナン、我が家で1番の情報収集の達人である。
今までも凄い情報を何度も入手した手練れだ。
だが、何故スネークス伯爵がコナンの名を知っている? 我が家の極秘事項なのに同盟関係なだけで、名前まで教える訳がない。
「スネークス家には近付きたくないと言ってな、今は東に調査に行っておるよ」
父が答えるが、スネークス家には近付きたく無い⁇ 確かにあの蛇の魔物には近付きたくないだろうが、あの男がそのくらいの事で逃げる訳がない。
いったい何があった?
「えらい嫌われちゃったなぁ。私はあの男の根性を認めてるんですけどねぇ。一周耐えたし」
一周耐えた? 何の話だ?
父に目配せする。いったい何の話なのか? と。
「ライアン、コナンはスネークス伯爵本人に捕まってな」
あのコナンが⁉︎
しかも伯爵本人に⁉︎
「その後、あの口の固いコナンを尋問して落としたんだ」
あのコナンが口を割った⁇
「ま、まさか⁉︎」
信じられずに口から声が漏れた。
「まあ、うちの尋問は独特でね、で、コナン結構耐えたんで優秀ですよ」
少し笑みを見せたスネークス伯爵の顔が、少し怖かった。
あのコナンの口を割らせるなんて事が可能なのか⁈
「昨日、性懲りもなく我が家に忍び込んだ賊が居ましてね。今、ウチの部下が尋問中ですが、見に行きます?」
と聞かれた。
どんな方法なのか、物凄く気になったので、
「是非!」
と答えていた。
が、父上は、
「私は遠慮する」
と言った。
「父上は既に見学済みですか?」
と聞いたら、
「いや、話に聞いただけだが、お前が見たいなら、是非見てこい」
と言った。
早速見学に行った。
見るんじゃなかった……
コナン、気持ちは物凄く理解できた!