ライアン登場
私の名は、ライアン。
ライアン・アボット。
アボット伯爵家の長男である。
自己紹介させて貰うと、年齢は25歳、身長180センチで銀色の長めの髪の毛と緑の眼だ。自分では程良く鍛えた肉体だと思っている。
数年前までは、国軍の近衛騎士団に所属していたが、今は領地にて運営の勉強中である。
そんな私に父からの手紙が届いた。
会わせたい貴族がいるようで、王都に来るよう書かれていた。
父が他家と距離を取っているのを知っている私は、その手紙を見て驚いた。
我が家は独自の情報収集をし、派閥に関係無く、適度な距離感で貴族を客観的に観察、それを精査し国王陛下に報告するという、独自のスタイルをとってきた。
それが他家と会わせたい?
確かに調査するにはそれなりの顔繋ぎも必要だし、ある程度は理解出来るが、わざわざ王都に呼び寄せてまで会わせたい?
父は何を考えている?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「父上、到着致しました」
執務室にいる父に、到着の挨拶をすると、
「ライアン、最近の王都や王国の状況は把握しているな?」
と、聞かれたので、
「報告された事であるなら、頭に入ってます。直近の事はまだ報告されてないかもしれませんが」
と答える。
「では、情報のすり合わせをしておくか」
そう言う父との話に数時間。
スネークス伯爵家。
ここ最近、やたら聞く家名である。
元リグスビー男爵家の三男で、第1軍に所属していた頃より、武名を挙げだす。
帝国の侵攻に合わせたウェスティン家の裏切りに、自分から実家が裏切っていると軍に報告。
監察官付きになるも、任務を全うし、親すら斬って反乱軍と帝国との戦闘の勝利に貢献。
その武功により、リグスビー男爵家の取り潰しを利用した陛下の采配により、スネークス子爵家を拝命。
その後も度々活躍し、現在は伯爵で中佐。
ソーナリス王女殿下と婚約中。
おそらく、近々のうちに更なる出世の報告が届くと予想している。
その当主であるパトリック・フォン・スネークスと顔合わせすると言う。
しかも、スネークス伯爵家と同盟を組んだと聞かされた。
スネークス家は王女殿下と婚約中なので、王家派で間違いないからそう問題は無いが、適度な距離感はどうなったのだろう?
明日の朝にスネークス伯爵家の王都の屋敷に向かうという。
何故そう急ぐのだろう?
翌日、馬車に揺られて20分程、スネークス家に到着する。
門番の男、かなりの腕前と見る。
目の動き、鋭い眼光、僅かな動きでも解る身のこなし。スネークス領軍は精鋭揃いとの報告通りか。
玄関に到着する。
スネークス家の扉は地獄への扉と噂があるらしい。
その話を父にもしたが、
「予備知識無しで、見て、聞いて、感じろ!」
と言われた。
門番が扉を開けてくれた。
咄嗟に数メートル後ろに飛んで、腰の剣を抜き、
「父上! お下がりを! その魔物父上では無理です。私が時間を稼ぎますゆえ、国軍の応援を! この分ではスネークス伯爵はすでに……」
「うむ、合格だ!」
「父上?」
「この魔物は、スネークス伯爵の使役獣だ、伯爵は魔物使いでな」
信じられなかった。魔物使いはかなり少ないし、使役出来るのは哺乳類系だけだと聞いていた。それが爬虫類系魔物を使役?
しかもあの大きさの魔物を⁉︎
「叫び声をあげなかったし、咄嗟に行動もした。この情報は私の方で握り潰したので、領地の方には届いていないはずだが、聞いてないよな?」
「は、はい父上。何故わざわざ情報を絞られたのです?」
「この家の異常性をその目で確かめて欲しかったからだ!」
いや父上よ、そんなドッキリ要りませんから!
少し寿命が減った気がする。