動乱の時〜レイブン侯爵領1〜
パトリックと8軍と毒蛇部隊は、レイブン侯爵領に向け王都を出た。
パトリック達8軍は第一戦闘配備で。走竜隊、馬隊、馬車隊と。毒蛇部隊も馬で続く。
王都から東に馬車で1日、そこがレイブン侯爵領である。
途中、使用人達の馬車を発見。
捕縛し、馬車の中を改めるが、メイドや使用人しかいなかった。
遅い馬車を捨て置き、馬で先に逃げたようだ。
「こりゃ、レイブン領軍とガチンコ勝負かな?」
パトリックが、左眼の横をトントン叩きながら呟くとミルコが、
「ガチンコって、何です?」
と尋ねた。
「真正面からのぶつかり合いってことさ。もっとも、馬鹿正直に正面から乗り込むつもりは無いがな」
「どうします?」
「移動しながら考えるわ」
呑気な答えが返ってきた。
馬車のスピードに合わせて移動する。
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ひた走る馬が二頭、その背中は白髪の小柄な老人と、175センチほどの細身の男性、レイブン侯爵は、息子と駆けていた。
城に遣わせていた部下が、叛乱失敗の報告を持ち帰って来てから、即荷物をまとめて屋敷を出た。
「あと少しで王の祖父になれたのにっ!」
「父上、そんな事言ってる場合ではございません! 領地に戻って兵で固めても、そんなに持ちませんぞ! どうするおつもりかっ! だいたい私は反対だったのです。やるなら反王家も取り込んで、しっかり作戦を練ってからにすべきだったのです! それを急ぐからこんな事に」
「今更言うな! 我が派閥に連絡して兵の増援と食料の確保をして、機を見るしかあるまい! 東は我が派閥も多い。何なら他の家もそそのかして、東で独立も視野に入れるべきか…」
「東方面軍を忘れてませんか? ワイバーンを倒す猛者どもですよ?」
「東方面軍は、対人戦の経験は浅い。なんとかなる!」
「まあ、なんとかしないと私の命が危ないので、協力しますがね」
「ヘンリーの奴め、絶対上手くいくなどと調子の良い事を言いおって!」
「それに乗ったのは、父上でしょうに」
「煩い!」
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次の日の昼頃、8軍達はレイブン侯爵領に足を踏み入れる。
侯爵領の領都の門は堅く閉ざされ、塀の上には見張りが多数。
それを遠くから見る8軍達。
「まあ、こうなってるわな〜」
「中佐、呑気な事言ってないで、どう動きます?」
ミルコは少し呆れた声で聞く。
「ワイリーとヴァンペルトと、ホンタス、エルビスを呼んでこい。会議だ。」
ミルコに命令する。
ホンタスとは、馬車隊の隊長である。
年は40の青髪青い眼のポッチャリおじさんである。
エルビスは、毒蛇部隊長である。
30歳の茶色い長髪に青い眼をした身長180センチほどのイケメンだ。
「さて、どうする?」
「どうするも何もあれだけ警戒されると、攻城戦と変わりません」
「だよなぁ。穴でも掘るか?」
「何日かかるかわかりませんし、崩落でもしたら、大被害です!」
「8軍にこの街の出身者居ないか? 毒蛇部隊は基本スネークス領出身だしな」
「え? さあ?」
「ちょっと聞いてこい」
「中佐、1人居ました、おい!」
現れた年若い男は、
「ジニー上等兵であります! この街の農家の出です。街に両親と兄2人が住んでおります!」
「よし! ジニー上等兵よ、街の内部の事や色々教えてくれ!」
「はっ! では、何からお伝えしましょうか?」
「まずは、壁や建物から…」
と、ジニー上等兵から、街の様子などを聞き取るパトリック達。
そして、
「これでなんとかなるか?」
「というか、他に手が無いような…」
「中佐が危険では?」
「しかし、他の者が一緒に行くと、バレて話にならないし…」
「俺のことはいい。自分でなんとかする。お前達は奴らに見つからないように迂回しろ。合図はいつもの黒煙な」
「承知しました。ご武運を!」
「じゃあ作戦開始だ!」