動乱の時4
時は王都からパトリックや軍が出て暫く経った頃。
王城に隔離されている叛乱貴族の縁者の兵と、2軍が揉めていた。
「何故我らが、こんな所で監視されねばならんのだ!」
「そうだ! 我らも同じ兵であるぞ!」
「煩い! 上からの命令だ! 我らは言われた事を遂行するのみ!」
そこに現れたのが、
「この騒ぎは何事かな?」
と、言いながら胸を張って歩く銀色の長髪に青い眼の男。
「ヘンリー殿下! このような所に如何なされました?」
第2王子であるヘンリー・メンタルである。
膝を突く兵に、
「いや、今日は何か城の様子が違うのでな。散歩がてら見て回っていたのだ」
「確かに今日はいつもと違うようですが、私は何も聞かされてませんので、分かりません」
「うんうん、だろうね。じゃあ君に1つ命令だ。隔離された兵を解放するように!」
言われた兵は、
「殿下、それは出来かねます。命令はアンドレッティ大将からですので、それを覆すことが出来るのは、大将と元帥だけで御座います」
「ふん。命令を聞いていれば長生き出来た'かも'しれんのにな」
そう言ってヘンリーは、跪いたままの兵の背中に剣を突き刺した。
それを見ていた他の2軍兵達が騒然とする中、
「よいか! 今日これからは私、ヘンリー・メンタルがこの城の主人となる! 今から父王と兄達を殺してな! 我に従うものは厚遇を約束する。そこの隔離された兵達、お前達の実家や親戚は今頃、王国兵によって捕縛されているぞ? 王家に叛意ありの罪でな。
このままでは良くて奴隷、悪くて死刑だ。お前たちはどうする?」
そう言うヘンリーに、
「わ、私は殿下に忠誠を!」
「私も!」
次々と隔離されていた兵が声を上げる。
2軍の兵にもその影響は広がる。
かと言って王子を拘束する権限など、兵には無い。
それを有するのは国王のみ。
2軍の数人がその場から走り去る。
1人はアンドレッティ大将の元へ、1人は近衛団長の元へ、また1人は、王の元へと。