アボット居残り
部屋を出て行くパトリック達。
「あ、アボット伯爵は少し残れ」
王に言われて立ち止まるアボット。
「陛下、何かまだございましたか?」
アボットの問いに、
「パトリックとどうやって繋がった? 接点がなかろう?」
「はは、その事ですか。いやまぁ私の失敗なのですが、お話しましょうか?」
「ああ、気になってなぁ。あやつ人付き合いが得意な方ではなかろう?」
「確かに。基本的には善人なのでしょうが、得体の知れないところがございますな。では、我が家の失態の話ですが、あれはそう… 」
アボットの説明に、
「なんともまあ、間が悪かったというかなんというか」
苦笑いの王に、
「確かに間が悪かったとも言えますが、逆に同盟を組めた事は良かったので、良いタイミングだったとも言えます。まあ、うちの部下には災難でしたが」
「あやつ、自分の敵には容赦無く立ち向かうようだが、まだまだ若い。上手く支えてやってくれ。此度の件、お主の功績はしっかり覚えておくし、解決した時は、しっかり評価する事を約束する」
「陛下、このアボット、鉄狐と揶揄されますが、王家への忠誠は今までと変りなく。そしてスネークス家との同盟も王家に害なきよう進めます。我が息子にも王家への忠誠と、スネークス家との同盟を引き継がせますゆえ、ご安心を」
膝を着いてアボットが宣言する。
「うむ。今まで他家とあまり関わらずに独自に調査し、報告してくれていた事は、信頼に値する。これからも頼むぞ」
「御意!」
「そちの息子、確かライアンだったか?パトリックには会わせたか?」
「いえ、まだです。タイミングを見計らっておりましたが、此度の件がそのタイミングかもしれませんな」
「かもな。あ、そうそうこれはワシが口出しすることでも無いが、うちの長女、クロージアとの事、認めんでもないぞ? 外野がバランスがどうのと煩いが、反王家の奴らに嫁がせるより、お主の家なら安心だしの」
「うちの愚息で宜しいのでっ⁉︎」
「なかなか良い腕前と聞く。あとはお主の経験を受け継がせれば、良い領主になろう」
「有り難き御言葉。この件が片付いてから、息子に伝えます。焦って勇み足など踏まれてはたまりませんから」
「うむ。では頼むぞ」
「御意‼︎」