勅命
慌ただしく部屋に連れて来られた法務長官。
60歳ぐらいか、細身の身体に白髪、青い眼をしている。
そして少し遅れて来たケセロースキー男爵。
パトリックと、面識のあるカイル・ケセロースキーの父親である。
カイルによく似ている。いや、逆で、カイルが父親に似ているのだ。
「ギブス法務長官、ちょっとコレ読んでみろ!」
いつもと違う王の口調に、真剣な表情で書類を読み始めた法務長官。
「こ、これは!…なんと!…馬鹿なことを…」
書類を、ケセロースキー男爵に手渡す。
ケセロースキー男爵も、慌て読み始める。
「な、なんと愚かな…これが本当ならば…」
2人は顔を上げる。
王を見つめて、
「陛下、これが誠なら反逆罪ですが、いかんせん証拠が御座いません。この手紙が本物かどうかもわかりませんし」
法務長官が言う。
ケセロースキー男爵は、
「調査部では、宮廷貴族のみ調査しておりましたので、見つけられず申し訳ございません! 今後、領地貴族も、調査の対象に致します!」
と、頭を下げる。
「証拠はこれから集めるが、証拠が揃えば長官として、何も言う事は無いな?」
王の真剣な目に、
「もちろんで御座います」
と、法務長官が答える。
「ケセロースキー、人員を増やしてやるから、反王家派を調査しろ」
「御意!」
「よし! では、今後の動きだ。パトリック、そしてアボット伯爵、勅命である! 王家調査部と共に反逆者共の証拠を集めろ! ケセロースキー男爵! 2人と共に証拠を見つけ出せ! ベンドリック宰相! 近衛に指示を出し、王家派貴族の近衛のみでソーナリスの護衛を! そしてギブス法務長官! この調査による多少の法の違反は見逃せ! 良いな!」
「「「「「御意!!!!!」」」」」
「あと、パトリック。ソナに会って行け。機嫌が悪くてかなわん」
ため息混じりに言う王。
「承知しました」
苦笑いのパトリック。