遠慮しとく
1時間もせずにアボット伯爵が屋敷に来た。
「遠征から帰ったばかりなのに、間者が忍び込んだとか?」
と聞かれたパトリックは、
「ええ、うちのぴーちゃん、あ、玄関の所に居る蛇のことですけど、ぴーちゃんが捕まえてくれましてね」
と答えると、
「それと関係あるやもしれないが、うちの情報部が掴んだ情報によると、スネークス伯爵とソーナリス殿下を狙う輩がいるらしい。これが掴んだ情報の詳細だ」
と、数枚の紙を渡される。
パトリックは手に取って、
「拝見します」
と言い読み始める。
「なるほど、間者が吐いた内容より細かい事まで書いてありますね! 助かります。間者は雇い主しか知らなかったようでね。しかし、私に喧嘩売るとは良い度胸だ。目に物見せてやる」
「やはり侵入者はこの関係かな?」
「ええ、私が疲れて帰ってきたところを襲うつもりだったようです。アボット伯爵、これは提案ですけど、私の仕返しに1枚噛みます? もちろんお礼はしますよ?」
「噛むとは、一体なにを?」
「それはね…」
呆れ顔でアボット伯爵が、
「また、良くそんな事思い付くもんだ。しかし実行できるのかね?」
と聞いた。
「まあ、なんとかなるのではと。ちょっと許可が必要かもしれませんが、実行は許可が下りしだいですね」
「まあ、我が家には損はなさそうだし噛んでも良いが、いいのか? また評判悪くなるぞ?」
「今更でしょう。新興の家の若造は、舐められたら終わりですよ。鉄は熱いうちに打て! ってやつです。
あ、ちゃんと汚れ仕事はうちがやりますからご安心を。
あ、そうそう尋問見ていきます?」
パトリックが聞いたが、
「遠慮しとく…」