尋問の指導
アストライアは目を背けながら、侵入者の指に針を刺す。
「こら! 目を背けるから、爪の隙間じゃないところに刺さってる! ちゃんと見ろ! 刺してから揺らしたり回したりしろ! そうすれば痛みが増幅するから! だめだめ! こうだよこう!」
パトリックが見本を見せる。
「いいか? 爪を剥ぐときは、ここからこういう風にぺンチでだな…」
「骨を折る時は、皮膚を突き破らないように気を付けろよ…」
「こっちはまだまだやり足りないって表情が大事なんだよ!」
「ポーションで治るように血を出さないようにするのがポイントでだな…」
パトリックの説明と、実演が続き、アストライアもさせられる。
この間、侵入者3人の悲鳴が鳴り響いている。
パトリックは気にならないが、アストライアの耳には、しっかりと響く。
「二周しても落ちない奴への最終の脅しとしてはだな、この穴の開いた針を静脈、まあこの血管のことな! ここに刺して血を流してやる。で、この容器に血を受けてだな、これから血が溢れる頃には、お前は死ぬぞって言うんだよ。命のカウントダウンだ。これは効くぞ〜! これで落ちなかった奴はいないからな!」
パトリックの、有り難くない講義を終え、気力が尽き果ててソファに倒れ込むアストライア。
そこに門番が入ってきて、
「お館様、アボット伯爵様の使者が来ております」
と、パトリックに告げる。
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コンコンとノックされる扉に、
「入れ。」
と、告げるパトリック。
連れて来られたアボット伯爵の使者。
歳は50ぐらいか、パトリックより少し低い身長の、目の鋭い男。茶色の短髪に茶色の眼。
「よう、確かコナンだったか? 久しぶりだな」
と、パトリックが声をかけた相手。
「お久しぶりです。私は2度と会いたく無かったのですが、伯爵命令ですので、使者として参りました」
と、答えるコナンと呼ばれた男。
そう、例の件でパトリックに尋問された、アボット伯爵家の間者である。
「まあ、そう言うなよ。お前は一周耐えたんだし、根性は認めてるよ。で? 用件は?」
「伯爵様から、至急知らせたい事があると。こちらに出向いても良いし、アボット邸でも良いとの事ですが、どちらになさいます?」
「今、昨夜忍び込んできた間者を尋問中でな。出来れば来て頂きたいと伝えてくれ」
尋問中の言葉に、吐き気を覚えるコナンだが、
「承りました。では、すぐに引き返して伝えてきます。失礼します」
と、急いで出ていった。