執事のため息
ようやく山岳地帯の制圧が終わった。
汚れ役の8軍は、早々に王都に戻ることにし、3軍と7軍に後を任せて帰還の途につく。
途中の町で8軍の息抜きと、慰労を兼ねた酒会を催し、パトリックは金貨5枚も使う事になったが。
てか、
「300人で飲んで金貨5枚ってなんなの?」
奢りと言った事を後悔するパトリック。
日本円で五百万円の宴会とか、そりゃ愚痴も出る。
まあ、人を殺した事でかなりの心労を負っていたようなので、多少でも癒せていれば良いのだが。
無事王都に戻り、陛下に報告を済ませる。
「スネークス中佐、ご苦労だった。8軍は5日の休暇を許す。しっかり休め」
王の言葉に、
「御配慮有り難く頂戴します」
と、謁見が終了し8軍の皆に、
「5日間の休暇だ! しっかり休めよ!」
と言い、解散させる。
で、王都の屋敷に戻って来たパトリックは、
「こいつら何?」
と、執事に聞く。
玄関に縄で縛られた男が3人。
「昨夜、屋敷に忍び込んだ輩です。かなりの腕利きで、警備兵は負傷、我らも危なかったのですが…」
「兵の怪我は? ポーションで治る程度か? 使用人は無事なのか?」
「はい。ポーションでほぼ回復し、我らも怪我は無いです。屋敷に忍び込んだ時点で、お館様の使役獣がこやつらを捕らえまして」
「ん? ぴーちゃんが?」
と、言ってぴーちゃんを見るパトリック。
スルスルと床を蛇行して、パトリックの元に来るぴーちゃん。
ぴーちゃんの頭を撫でながら、
「ぴーちゃんが捕まえてくれたの?」
と聞くと、何となくイメージが頭に流れ込む。
侵入した間者の1人を尻尾で叩き倒し、2人に巻き付いて全身骨折させるぴーちゃんの姿が。
「うんうん、偉いねぴーちゃん。明日の朝は森にご飯食べ放題に行こうね!」
パトリックの言葉に、尻尾を振ってご機嫌な、ぴーちゃん。
「で、尋問はしたのか?」
アストライアに聞くと、
「しましたが何も吐きませんで」
「それはやり方が悪いんだよ。俺が教えてやるから一緒に来い」
と言ったパトリックに、執事は顔を真っ青にする。
「あ、アレを私にやれと?」
「いつまでも俺の尋問頼みじゃ、俺が不在の時に困るだろ?」
「あ、いや確かにそうなのですが、私にできますか? と言うかやれるのでしょうか?」
「あんなもん慣れだよ、慣れ!」
慣れたく無いと心で思うも、口には出せない執事。
主人の命令は、遂行されるべき事案である。
「はあ…」
ため息が小さく聞こえた。