砦で尋問
男の足首を持ち、頭を引きずって砦に現れたパトリック。
既に砦の周りに部族の姿は無く、王国兵による砦の補修が始まっている。
次に備えているのだ。
尋問室にて、パトリックの尋問が始まり、男は2周目の爪を剥がされたあたりで精神をへし折られて、とうとうと喋りだす。
この男、1番大きな部族の長で、今回の戦の主犯であった。
帝国に食料を援助してやるから、王国に向けて出兵しろと言われたらしい。
戦闘を継続している間は、食料を安くすると唆されたのだ。
「つまり、王国の戦力を少しでも減らしとこうって作戦ね。帝国もこすいなぁ」
「だが、帝国に問いただしても認めんだろうなぁ」
同席して居た中将と少将の2人は、パトリックの尋問にドン引きしながらも、意識は保っていた。
部屋の中に居た護衛の兵は、最初の方で、腰を抜かし吐き気を催し退出してしまっていた。
「どうします?」
パトリックが聞くと、ガナッシュ中将は、
「どうもこうも、陛下に報告して、判断を仰ぐしか有るまい」
と答える。
「ですね。伝令を7軍から走らせます。3軍、8軍は、この砦で待機して貰って良いでしょうか? 7軍を少しでも休ませてたいので。」
と、金髪の頭を下げるフィッシャー少将。
「それなら伝令は3軍から走らせよう。スネークス中佐、8軍は、周囲の警戒を頼む」
ガナッシュ中将が決める。
「了解しました。では、ここを頼みます」
パトリックが尋問室を出た後、
「なあ?フィッシャー」
「はい…」
「立てるか?」
「無理です。腰が抜けて…」
「ワシもだ。アレで吐かないヤツとか居るのか?」
「無理でしょう、正直、中佐が怖いです…」
「陛下が取り立てる訳がようやく分かった気がする」
「陛下はあの尋問、知ってるんですかね?」
「聞いてはいるかもしれぬが、見てはいないはずだ。アレは見せられん」
「ですね…」
パトリックから解放されて気を失っている男を見て、
「この男、死神に捕まったのが運の尽きだったな」
「赤い死神って、まさにその通りでしたね。全身返り血で真っ赤、黒い瞳だけが浮き上がってて、7軍の何人かは恐怖で倒れましたよ」
「ヤツの訓練受けてみろ、全員倒れるから」
「3軍も?」
「3軍どころか、1軍、2軍も倒れたぞ。近衛すらも!」
「受けたく無いです」
「そろそろ動けるか?」
「まだ無理です…」
「「誰か来ないかな?」」
2人の声が揃った。