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親とは?

「合図の黒煙を上げろ!」


パトリックの指示により、ミルコがリュックに詰め込んでいた石炭に火を着ける。燃やすと、大量の黒い煙が上がった。


パトリックは先に合図を出して敵に発見されることを避けたのだ。

8軍は次々と部族を倒していく。

敵の兵の練度は低く、槍を振り回すだけ。

走竜隊の8軍は圧倒的に有利であった。


馬隊の8軍は弓矢で広範囲を攻撃する。

逃げる敵の背に、次々と刺さる。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

一方北の砦は、

「合図の黒煙を確認っ!」

砦の見張りが叫ぶ。


「よしっ! 正門前の敵に矢を放て! 数が減ったら一気に出るぞっ!」

砦の中が慌ただしく動き出す。


そうこうしてると、敵側からラッパの音が鳴る。

ただのラッパではない。魔道具のラッパなので、かなりの大音量である。


「敵が後退していきます!」

「確かに! よし! 門を開けて突撃せよ!」


正門が開いた途端、王国騎兵が一気に走り出す。

部族を蹴散らし敵の中央部へ。

3軍、7軍、北方貴族領軍は、今までの鬱憤を晴らすかのように突き進む。

騎兵は先頭を走り、その後を歩兵が駆け抜ける。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


山岳部族側の代表達は焦った。

攻めあぐねていた砦を囲んだのが裏目に出た。

囲むのに兵を使ったため、司令部に居る兵が少なくなってしまった。

その兵達も、後方より攻撃を受けたため、現在そちらの防衛に割いている。

そこに砦から騎兵の突撃を受けている状況だ。


「ええぃ、囲んでいる兵を呼び戻せ!」

合図のラッパが鳴るが、司令部に戻るまでには時間がかかる。兵が戻るより先に、敵の騎兵が本部に到着してしまうだろう。


「どうするのだ? このままでは負けてしまうぞ!」

「1度退却して立て直すか?」

「まだ数はこちらが上だろう?」

「立て直してやり直せば勝てる!」

「いや、退却できるのか?」

「どちらにせよこのままでは、どうにもならん!」

「よし! 退却だ! 合図を!」


またもラッパが鳴る。

司令部も撤収作業などする暇なく、各自が逃げる準備に追われる。


が、


「うげっ」

「ごふっ!」

と、呻き声を上げて、1人、また1人と倒れだす。

「何事だ! 敵か?」

「分かりません! が、矢などは飛んできておりませんし、傷は斬り傷です!」

「とにかく逃げるぞ!」


「逃す訳にはいかないなぁ。特に偉そうなお前たちは」

すぐ横から声がした。

「だっ、誰だ貴様!」

驚き一歩下がった男に、


「お前達が戦を始めたんだろう? ならば終わらせる責任が有ると思うがな。じゃなければ、兵は全滅するぞ? このまま兵達を無駄に失って良いのか?」


剣を構えた男は、

「黙れ! あのままでも皆飢えて死ぬのだ! 貴様らに解るか! 食料も無く、家族、知り合いが痩せ細り、1人、また1人と飢え死にしていく辛さがっ! 食料を求めて平地に行くたびに追い返されるのだぞ!」


「皆が食料が無いほうが諦めつくだろう? 親兄弟が、豪華な食事をしているのに、自分の分だけ用意もされず、親兄弟どころか、使用人からすら、殴る蹴るの暴力を振るわれるほうが辛いと思うがな」


剣を振り下しながら、

「そんな親が居てたまるかっ! 親とは子のためなら、飢えても我慢出来るものだ!」


「お前達の所の親はまともだな。うちの親はたかが銀貨10枚の為に、10にも満たない子供を知り合いに日貸しするようなカスだったがな。だが、略奪に来るのは許せんな。何故交渉に来ない。労働力を提供するから、食料を分けてくれと、何故頼まない?」


振り下した剣をそのまま振り上げ、

「それでは親子が離れ離れになるではないか!」


「一緒に死ぬくらいなら、離れて暮らしても生きてるほうが良いと思うが?」

一歩踏み込み、

「離れていたら生きているか確認出来んではないか!」


「それはやりようがあるだろうに。まあ、いい。今更な話だ。お前達は利用価値があるので、殺しはしない」


その言葉と同時に、振り下した剣を避けられた後、脇腹にパトリックの右拳がめりこみ、男はその場に倒れ込む。







石炭は薪より高価なのと、黒煙の量が多い為、屋内では使用されていませんが、屋外だと使われています。

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