部隊
とある場所、とある家。
そこに数十名の男たち。
「あの男が王家から妻を迎えるなど許せん!」
「そうだ! あのような若造に潰された我が家の恨みを!」
「あいつのせいで、俺は軍曹に格下げされたんだぞ!」
パトリックへの不平不満があちこちで叫ばれる。
「でだ! どうする? ヤツをこのままのさばらせておくのか?」
「そんな事許せん!」
「ヤツを破滅に追い込まなくては我慢ならん!」
「ヤツの領地で暴れるのは?」
「どのくらいの人数を用意できる? 人を雇うのにも金が必要だぞ? 有るか?」
「うちは財産没収されたから無いぞ」
「財産くらいなんだ! うちは本家が取り潰しだぞ!」
「お前たちは家族が生きているだけマシだろう。うちは兄夫婦や甥っ子達、全員処刑だぞ」
「うちもさ」
「皆金は無いから、多人数は無理だな。だが、小さな嫌がらせでは、納得出来んだろう?」
「当然だ! ヤツの首を取りたい!」
「領地は兵も多いから、やるなら王都だ。出来るか?」
「腕利きを少数雇うか? 2人位ならなんとかなるのでは?」
「屋敷に忍び込ませるか? それとも軍事行動中を狙うか?」
「それは雇う者の技量によるな」
「とりあえず皆出せるだけ出してくれ。それで腕利きを雇う。暗殺はその者にやらせるとして、あとは個々に出来るだけ嫌がらせをする。これしか無いだろう。今の我々ではな」
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パトリックは、捕らえた間者のうち、例の尋問の1周目に耐えられた者以外は、鉱山に売り払った。
借金奴隷である。
この国は、犯罪奴隷と、借金奴隷が認められている。犯罪奴隷は、刑期の間、強制労働である。
借金奴隷は、労働で借金分を返すまで、通常労働である。
領地での犯罪は、領主によって裁かれる。
不法侵入の罪で犯罪奴隷としても良かったのだが、民に被害が出た訳でも無いし、財産を盗まれた訳でも無い。敷地内に不法侵入しただけなので、パトリックは捕らえた間者ごとに値段設定し、借金奴隷として売り払ったのだ。
その後、借金を返して解放された時に、スネークス家の危険度を広めてもらう広告塔として。
それとは別に、尋問を一周耐えた者には、とある選択肢を、与えた。
「うちで働く気は有るか?」
と。
スネークス家は、新興の家である。
リグスビー家の時は、一応スパイ活動をする人員や騎士を持っていた。
まあ、末期はその費用を捻出できずに、居なかったようだが。
前に、騎士爵は、貴族に認められた者と書いたと思うが、貴族に認められた者が、何故騎士爵になれるのか?
それは認めた貴族が、年間金貨10枚の騎士税を王家に納めているからだ。その中から金貨5枚を騎士爵に支給している。
任命された騎士爵の者は、〇〇家が騎士、△△と名乗る事になる。
騎士に任命するだけで、貴族は金が減っていくのだ。
パトリックはまだ自家の騎士を持っていない。
情報収集部隊も無い。
パトリックの一周目の尋問を耐えた29名は、パトリックの誘いに乗った。
いや、恐怖で、拒否できなかったのかもしれない。