貴族街にて3
いつも誤字報告くださる方、ありがとうございます。
大変助かります。
後日、パトリックはアボット伯爵を屋敷に招いた。
もちろん玄関前でのぴーちゃんの説明は、忘れない。
アボット伯爵は、年齢は50歳ほどで痩せ気味、銀髪で身長170センチほどの男である。
顔に刻まれたシワは、意志の強さの現れか、それとも苦労の結果か。
アボット伯爵はスネークス家との関係でいうと、敵でも味方でもない、様子見していた家だが、今回は様子見の一環としてのスネークス領潜入だったらしく、領地の交易品である酒関係は調査して当然。たまたま運悪くパトリックに捕らえられた訳だ。
「なんと当主自ら捕らえたのか?」
緑の眼を見開き聞き返す。
アボットには考えられなかったようだ。
アボット伯爵家は領地運営に重きを置いているため、パトリックの出世は部下から伝え聞いてはいるものの、実感がわかなかったのだ。
また、自分の部下がアッサリとアボット家の事をゲロった事、これに大変興味があった。
長年仕えた部下が、自分の事をすんなり吐くはずがないのだ。そこは信頼できる部下を使っている。
だが、パトリックからの尋問、いや、拷問と言おう。その内容を聞き、
「そりゃ吐くわ…」
と、少し引いていた。
改めて謝罪をし、手土産として、自領で取れる上質の鉄で打った短剣を10本渡してきた。
北の方は鉱山が多いが、特にアボット領産の鉄は上質で知られ、また抱える鍛冶屋も質が高いので有名である。
パトリックは有り難く頂戴し、今後の話をしていく。
「では、アボット領からは鉄、スネークス領からは酒の交易がメインとして、他もある程度流通させましょう」
と、話が纏まる。
「では、今後は情報交換もすると言う事で、今後共よろしく!」
「こちらこそ!」
と、2人が握手し、
パトリックは手土産に酒の詰め合わせとチェスを進呈したのだった。