間者
パーティーも無事終わり、通常通りの生活に戻るパトリック。
いや、通常通りでは無いかもしれない。
パトリックが王都に滞在中は、軍務が休みの日には来客がある。
来客筆頭はソーナリス。
パトリックから戦闘スタイルなどを聞き、鎧のデザインの参考にするらしい。
2番目に多いのはカナーン家の誰か。
トローラであったり、アイシャであったり、デコースが来たこともあった。
3番目はディクソン家。
主にケビン君。
どうやら国軍に入隊希望らしいが、まだまだ年齢的に無理なので、パトリックに訓練内容を聞き、自主トレをするらしい。
そろそろ領地に戻るとの事だ。
他にもパーティーに来てくれた家が、交易の商談に来たりもした。
風呂に関しては職人を紹介してあげた。
酒はかなりの家から手紙でのやり取りもあり、爵位により量を決めて流通させて貰う事にした。
これによりスネークス領はさらに物流面で、重要な場所になっていく。
他領から来る商人も増えるので、宿屋や歓楽街が増えた。
その分治安維持に金がかかるようになったが、税収も増えたので問題ない。
問題と言えば、王都の屋敷周りに不審者が現れるようになった。
おそらくどこかの家の間者であろう。
様子を窺う者、塀を乗り越える者。
これはすぐに警備に取り押さえられているが。
パトリック直々の尋問により全てをゲロった間者によると、狙いは新たな酒の製造方法らしい。
この世界、特許を取ったからと言って製造方法を公開する義務は無いので、知っているのはパトリックと領地の職人だけである。
職人にはたっぷり報酬を払って口止めしているので、未だに情報を漏らした者は居ないようだ。
ただ、領地のほうにも、かなりの数の間者が放たれているらしい。
「次帰ったときに一掃しておくか」
ニヤリと笑ったパトリックの顔を見て、アストライアの顔から冷や汗が落ちたとか、落ちなかったとか。