特別任務2
カイルから、詳しい話を聞き、翌日の夕方には、パトリックは行動を開始した。
王都のとある貴族屋敷に向かう。
屋敷の門から少し離れた所で、張り込み開始だ。
日が落ちてから、人の出入りも無い。
パトリックは、覚悟を決めて歩き出す。
「サイレント」
パトリックが呟く。
別に魔法では無い。パトリックは魔法など使えないので。
自分に暗示をかけているのだ。
これから隠密モードだぞ! と。
逆にやる気を出す時は、アクティブと呟いていたりする。
屋敷の壁をよじ登り、庭に降り立つと、屋敷に駆け寄る。
窓から中を覗く。
もちろん明かりのついて無い窓だ。
が、全て鍵がかかっていた。
どうするか悩んでいると、門の方で声がした。
「おう、婆さん、またマッサージか? いつもご苦労さん。一応聞いて来るから待ってな」
門番の男が、老婆に声をかけ、玄関に向かう。
チャンスだ。
パトリックは、玄関の脇に控える。門番は扉を開け、中に入る。
門番の男のすぐ後ろに張り付いたパトリックも続いて入れた。
奥に向かった門番がすぐに出てくる。
玄関を開けて、老婆を呼び込む。
「旦那様は、いつもの部屋だ。いつものように1人で行って良いってよ。じゃあ、俺は仕事にもどるからよ」
そう言って門番は、門の方に戻っていく。
パトリックは、どうやらこの老婆について行くと、この屋敷の主人に辿り着けそうだと、少し喜んだ。探す手間が省けたと。
しかし、この後、拷問にも似た体験をするとは思わなかった。