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姉×萌え×ショタ ~才色兼備な姉の弱点はボクなんです~  作者: とら猫の尻尾
第二章 鮫島花梨AAは女を磨きたい《高校入学編》
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策士は溺れない(結)

「そ。鮫嶋さんが俺にして欲しいこと、言ってみてよ」

「カリンが……センパイにして欲しいこと……?」


 鈴木先輩に机ドンをされた花梨さんは床に女の子座りをした姿勢で、頬に人差し指をあてて小首を傾げる。

 さっきまで自分からグイグイ迫っていったくせに、今はまるで形勢が逆転して、やや焦りの色がみてとれる。

 それでも、これは彼女からすると願ったり叶ったりの状況なわけで……


「ほっ、本当に何でもしてくれるんですか? センパイ! 武士に二言はありませんね?」

「俺は武士じゃないけど、嘘はつかないよ? 俺はまっすぐな男だからさっ」

「じゃ……じゃあ……あの……」


 ごくり。体をもじもじとくねられながら花梨さんが何かを言おうとしている。

 これ、もしかして絶対に言ってはいけないことを言おうとしているのでは?

 どこからともなくごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。


「ぴぃぃぃー! キミたち由緒ある星高生徒会室で、不純異性交友はいけないのだにゃー!」


 たまらず名取さんが、バスケの審判が笛を吹くような感じで止めに入った。

 

「は? これのどこが不純異性交友というんすか? 鮫嶋さんと俺は先輩達が取り決めたルールの上で、バディーになったっすよ? そしてバディーを組んだ二人は授業以外の時間は共に過ごしてコミュニケーションをとらなければならない。これのどこが不純異性交遊だというんすか?」


「あわわっ、鈴木っちが珍しく私に反抗してきたにゃあー! 美紀ちゃんヘルプミィーだにゃー!」


 ムードメーカーの工藤さんは鈴木先輩に反論され、工藤さんの腕にすがりついた。

 工藤さんはため息をつき、鈴木先輩の元へと歩み寄る。


「あなたいい加減にしなさい! フラれてめそめそしているぐらいならまだ同情の余地はあったけれど、今度は当て付けに鮫嶋さんを利用しようとしていないかしら?」

「えー、そんなことないっすよー。俺はただ、可愛い後輩の願いを訊いていただけっすよ?」

「す、鈴木センパイ最高っす!」


 空気の読めない花梨さんは、『可愛い』に反応して火照った頬に両手をあてて鈴木先輩の口まねをしている。

 ねえ君、いつまで床に座ってんの?


「はあーっ、話にならないわね! ねえカエデからも何か言ってやってよ!」


 その工藤さんの声をきっかけに、皆の視線が一斉に姉に集まる。 

 姉は会長席に座り、一人スマートフォンをいじくっていたらしく、『えっ?』という表情でメンバーの顔を見回している。


 シーンと静まりかえる。


「え、あ、うん。私はそれでいいと思うよ?」


 そして適当に相づちをうった。


「そういうことだから、さあ、鮫嶋さんの願いを俺に訊かせてよ!」

「えっとね……カリンの願いはぁー……」

「ぴぃいいー! そこの二人、離れるんだニャあぁぁぁー!」


 話しが振り出しに戻った。


「鈴木君! 私たちが提案した取組は、二週間限定のことなのよ? そしてその目的はあくまでも、コミュニケーションスキルの育成なのよ!」


 工藤さんも止めに入ろうとするが、鈴木先輩は、キッと顔を向けて牽制した。


「でも、バディーを組んだことを切っ掛けとして、二人が恋愛関係に発展したとしても……それは二人の自由っすよね?」

「そ、それは……」


 たじろぐ工藤さん。

 その隣で、ハッとした表情を浮かべている名取さん。


「と、言うことは……あのふわふわぷるぷるなおっぱいが私の物に……なるということも有り得るのにゃー?」


 などとつぶやきながら、姉の方を見る。

 視線を感じた姉は、戸惑いの表情を浮かべて胸の前で腕をクロスさせた。


 吉岡先輩と佐渡副会長は、互いの顔を見合ってゴクリとつばを飲み込んでいる。というか、まるでこの二人は存在感がないんだけど、大丈夫なの?


 兎にも角にも、鈴木先輩の一言は、生徒会室の雰囲気を一変させてしまったのである。


 鮫嶋花梨は空気を読まない。

 今や、それが唯一の救いだった。


「んーと、カリンの願いはセンパイに勉強を教えてもらうことです!」


 キラキラした笑顔で言った。

 ため息と感嘆の声が交錯する。


「そんなんで良いの? 何というか……すごく普通だね?」

「え、願いって、そういうことじゃなかったんですか?」

「あ、いや、うん、そういうことで良いんだけどね?」


 鈴木先輩としては肩すかしを食らったような形になったけれど、周りはホッとした表情に変わった。


「あ。あと、来週のテストで10位以内に入ることができたら、カリンと週末デートしてください!」

「うん。いいよ。じゃあ、明日から勉強頑張ろうネ!」

「はい!」

 

 生徒会室は穏やかな空気に包まれていた。

 このとき、皆の感覚は完全に麻痺していたのである。 

 


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