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姉×萌え×ショタ ~才色兼備な姉の弱点はボクなんです~  作者: とら猫の尻尾
第二章 鮫島花梨AAは女を磨きたい《高校入学編》
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春の嵐(結)

「ねー、アンタから聞いた話、だいぶ間違っていたみたいなんだけどさー?」


「な、なんの話……かしら?」


 花梨さんに詰め寄られた体育委員の女の子は、しらを切ろうとしているけれど、ものの見事に失敗していた。彼女の特徴である目尻がつんと上がった猫のような目は、せわしなく左右に動いて視線が定まらないでいる。


 そりゃあ、動揺するなっていうのが無理な話だよね。まさか集団の利で罠にかけた相手が、主導者である自分のところに、直接詰め寄ってくるなんて想像もしなかったことだろう。




 自分が集団から外されていると感じたとき、ボクらは戸惑う。

 圧倒的な数の暴力に、ボクらは恐怖心を抱く。

 だから、気付かないふりをして、なんとかその場をやり過ごそうとする。

 へらへら笑い顔をつくり、何事もなかったかのように振る舞う。


 それが普通の人なんだ。

 それが、普通の人間の反応なんだよ……


 花梨さん――




「ぶっちゃけアンタ、嘘をついたでしょ! なんで? どうして? あの黒い人が言っていたんだよ、女子と男子が無理してペアにならなくても良いんだって!」


 人差し指をビシッと先生に向けて言い放つ花梨さん。

 黒い人呼ばわりされた先生は、目を見開いて猫背気味だった背筋をピシッと伸ばした。

 

 花梨さんの切り口は、まさに単刀直入だ。


 相手の女の子も、まさかここまでストレートに核心を突かれると、もう観念するしかない。フッと口の端を上げて――


「そう、確かに私は嘘をついたよ。でも……、それは鮫嶋さんのためなのよ?」


 ――ニタリと笑い、完全に悪人顔になっていた。


「カリンの……ため?」


 首を傾げる花梨さん。これまでの勢いが、急激に弱まってしまう。


「うん。だって、鮫嶋さんと夢見沢君って、お似合いだもの。……ねえ、ゆっ子もそう思うでしょう?」


「ふぇっ!? う、うん。ふ、二人はお似合いだよ!」


 体育委員長のそばに立っていたゆっ子と呼ばれた女子は、慌てた様子でコクコクとうなずいた。

 その様子を満足そうな顔で見た体育委員長は、周囲に視線を巡らせながら―― 


「ねえー、他の皆もそう思うでしょ? 鮫嶋さんと夢見沢君って、お似合いだよねー?」

 

 ――周りの女子たちに同意を求めていく。

 やがて集団は、一人の女の子を標的にすることで結束を高めていく。


 その時ボクは、ただその様子を見ているだけの木偶の坊(でくのぼう)と化していた。

 


 ボクの視線の先で、花梨さんの小さな背中はまるくなり、より小さくなっていく――いや、違う!


 それはボクの勘違いだ!


 なんと言っても、そこに立つ少女の名は、鮫嶋花梨なのだ!


「そっかー! アナタはカリンとショタ君をくっつけようとしてくれたんだー! アハハハハ、そっかー、そうだったんだー」

 

 突然笑い出した花梨さんを見て、目をぱちくりさせている体育委員長。


「でもゴメンねー! ショタ君だけ(・・)は無いわぁーっ!」


「ぶへっ!?」

 ボクの口から変な擬音が飛び出した。


「だって、カリンが探しているのはぁー、背が高くってー、イケメンでぇー、頼りがいのあるオトコなんだよ? ショタ君には何一つ当てはまらないでしょ?」


 花梨さんから発せられた単語の一つ一つが、ボクの小さな胸に突き刺さっていく。これがゲームだったら、残りライフ0でゲームオーバーになっているだろう。


「で、でも……あなたと夢見沢君はいつも一緒にいるじゃない? 少しは気になるところがあるんじゃない……かな?」


 や、やめて!

 そんな目で見ないでぇー!


 眉根を下げて視線を向けてくる、猫目の体育委員長に向かって心の中で叫んだ。 

 

「えー、どうかなぁー……?」


 腕組みをして、花梨さんが振り向いた。

 なぜボクは花梨さんに、振られたみたいになっちゃっているんだろうか。

 

 なぜ?


「ショタ君は……手のかかる弟みたいなもんだからさー……」


「ぶへっ!?」

 またまたボクの口から変な擬音が飛び出した。


「――なんか、危なっかしくて放って置けないっていう感じー?」

 

 どの口が言うか!

 そのセリフ、そのまま花梨さんに叩き返してやりたいよ!



 でも――


 花梨さんの一言は、その場の雰囲気をガラリと変えるパワーをもっている。

 信じられないくらいにポジティブな花梨さんには、小手先の小細工など通用しない。

 そのことは、F組の女子集団には痛いくらいに分かったはずだ。


 ボクの心も、ちょっぴり痛い。


 

 それから二言三言、女子たちと言葉を交わしてから、花梨さんはボクの元へと戻って来た。


「ん? どうしたショタ君? またお腹痛くなっちゃった?」

「ど、どうもしていないし……それにボクは初めからお腹痛くはなかったし……」

「ふーん、まっ、いっか! 気持ち悪い笑い方されるよりも、その方がカリンは好きだよ!」


「ぶへっ!?」

 またまたボクの口から変な擬音が飛び出した。



「んー……、別にこの学校は男女交際が禁止って訳ではないが、節度をもつことが大切だぞ!」


 ボクの肩をポンと叩き、ステージにさっと上がっていく『黒い人』。

 どうやら話しの流れを全然理解していない人が、もう一人いたようだ。


これまで花梨さんに振り回される祥太くん。

彼の立場が逆転する日はやって来るのでしょうか……


これにて『春の嵐』が完結です。

お付き合いありがとうございました。


挿絵(By みてみん) 


次話から、いよいよ花梨と楓が絡んでいきます。

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