表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉×萌え×ショタ ~才色兼備な姉の弱点はボクなんです~  作者: とら猫の尻尾
第二章 鮫島花梨AAは女を磨きたい《高校入学編》
76/167

夢見沢カエデの初詣大作戦!《第2.5話》

 令和最初の年越しを記念して、番外編をお届けします。

 時系列しては、第1章第2話と第3話の間に入るエピソードとなります。

 ここまで読んでいただいている読者の皆様に感謝の意を込めて、令和二年元日の朝に書きました。

 本年もどうぞよろしくお願い致します。

 大晦日の年越し番組を二人で観ている。ううん、正確にはお笑いタレントが、迷彩服を着た男たちにお尻を叩かれている場面を見て、けたけた笑っている(しょう)ちゃんの横顔を、私はじっと見つめているのだけれど。


「ほんと、面白いよね!」

「ふえっ、な、なにが!?」


 不意に天使の微笑みが向けられ、私は思わずのけ反ってしまった。弟の神々しいばかりの眩しさに、私の下心が見透かされるのではと(おのの)いたのだ。

 もったいないことをした。


「何がって……テレビ番組のことだけれど。あっ、やっぱりチャンネル変えよっか? お姉ちゃんはあんまりお笑い番組は好きじゃないかな?」


「だめぇー! お姉ちゃんの楽しみを奪わないでぇー!」


 私は慌てて、テレビのリモコンを握る弟の手を両手でおさえた。

 (しょう)ちゃんは、まん丸お目々をぱちくりさせて私を見てきた。


「ボクがお姉ちゃんの楽しみを奪う!? それはまったくの誤解だと思うけど、誤解させちゃったことについては謝るよ。ほんとにごめんなさい……」


「あっ……私の方こそごめんね(しょう)ちゃん。でも、本当にお姉ちゃんは(しょう)ちゃんが観たいテレビ番組を見るのが楽しみなの。幸せなの。はい、ミカンをお食べなさい!」


 半ば無理やりに話しを終わらせた。

 (しょう)ちゃんは首を傾げつつも、テレビに視線を移した。


 もぐもぐもぐ…… ごっくん。


 中学男子としては奇跡的に美しく、のど仏も出ていない弟の喉がごっくんと動くこの瞬間が好き。


 テレビを観ながらころころと笑う弟の隣で、私はひたすらミカンの皮をむき続ける――





 年越しのお笑い番組が終わり、ニュースに切り替わったとたんに、可愛い二重のまぶたがゆっくりと閉じていき、コタツの掛け布団をきゅっと握ったまま眠りについてしまった(しょう)ちゃん。

 その様子をじっと見つめたまま、私はその隣にゆっくりと横になる。吸い込まれるような天使の寝顔に近づきたくて、くねくねと身体を(よじ)らせて近づいていく。


 除夜の鐘が微かに聞こえる。近所のお寺の鐘の音が、住宅街のここまで届いているのか。百八つの煩悩をはらうといわれる鐘の音と、(しょう)ちゃんの寝息の音が重なるこの瞬間が、好き――


「この鐘の音で、お嬢さまの煩悩もはらわれるといいのですが……」 


「はっ!」


 突然耳元で聞こえた女の声に、私は飛び起きた。

 あやうく年明け早々に、心臓が止まるところだったわ!


「明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします」


「き、喜多!? 心臓に悪いから、突然話しかけないでもらえるかしら?」


「申し訳ありません。ついつい、昔のくせが出てしまいますね。ええ、くノ一時代の昔のくせが……くノ一ですので、ええ……」


 彼女は夢見沢家に仕えるスーパー家政婦の喜多(きた)。本人が言うように、伊賀忍者の末えいなのだけれど、『くノ一時代』というのは冗談なのだと思う。だって、現代の日本に本物の忍者がいるわけがないもの……


「ま、いいわ。今度から気を付けてね! ところで、例の作戦の準備は、もう整ったのかしら?」


「はい。準備万端整いましたゆえに、お嬢さまを呼びに来たのです。そうしたら、何ということでしょう……祥太お坊ちゃまの寝込みを襲うくせ者を見つけてしまった……という訳でございます」


「それは危ないところだったわね。……んん? そのくせ者って?」


 首を傾げる私にはお構いなしに、喜多は私の腕をぐいぐい引っ張って二階に上がっていく。彼女に連れてこられたのは、私の部屋。

 クローゼットの中にぶら下がった緑色のロープをぐいっと引くと、壁の向こう側からカタンと音が鳴り、隠し扉が現れるだ。


「ひさしぶりね、喜多の部屋に入るのは……」


「あっ、足元にお気を付けください。それから、内部の壁にお手を触れませんように。素人にはやや危険なトラップが各所に仕掛けられていますゆえに……」


 こわい。


「どうしましたか、お嬢さま? 初詣には着物をお召しになるというご要望にお応えすべく、不肖この家政婦の喜多は準備万端整えました。あとはそれを無為にするか、夢を実現するかは、あなた次第でございます!」


「い、行くわよ! 上等だわ!」


 一歩目で、私の足首にロープが引っかかり、私の身体はぶらーりと宙づり状態にぶら下がってしまったのだった。



今回の番外編は、後日、第1章の終わりに移動する予定です。

しおり位置のずれなどでご迷惑をおかけするかもしれませんが、ご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作公開中!『馬小屋のペティ』
script?guid=on
小説家になろう 勝手にランキング

↑↑1日1回のクリックお願いします↑↑


小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ