ようこそ!お姉ちゃん温泉へ(4)
「うふふっ、お姉ちゃんねー良いもの持っているんだぁ。何だと思う? 当ててみてー!」
テレビの前のソファーに座っているボクに、前屈みの体勢になってこれ見よがしに胸の谷間を見せつけてくる姉。
そんな姉が一緒に温泉に入ろうと言ってきた。
それって……どういうこと?
一体お姉ちゃんは何を持っているというの?
ふわりと薔薇の花の香りが漂ってきて、ボクの鼻孔を刺激する。それにつれて思考力がどんどんそぎ落とされていく気がする。
だ、ダメだ!
このままではいけない想像しかできないよ!
実際、ボクの視線は既に、第一ボタンを外した胸の谷間から見えている黒い下着に釘付けなんだ。
「ひ、ヒントをくれなきゃわかんないよ……」
何とか声を絞り出した。
声は完全に裏返り、ボクは恥ずかしさのあまり目を固く瞑った。
「ふふふっ、ビニールに入っているナニカだよー♡」
「び、ビニール? 袋のこと?」
「そう。白くてぇー、少し黄ばんでいるけどー、揉むとたぷたぷ気持ちいいナニカ……だよ?」
「揉むとたぷたぷ……気持ちいい……?」
「そだよー。ほら、手を出してみて。揉ませてあーげーる!」
「ひっ!?」
思わず縮こまるボクの手を掴んで強引に自分の胸元に引っ張り上げる姉。
『揉ませてあげる』『気持ちいい』というキーワードを聞いて、ボクの想像はもはや極限値を超えて天井を突き破る勢いだ。
「ほらっ♡」
ところがボクの予想に反して、姉はもう一方の手でボクの手の平に何かを乗せてきた。それは少量の液体と少し黄ばんだ粉が入っている小さなビニール袋。
指を使って揉み込むと、確かに粉が溶けて液体状になってたぷたぷと気持ちいい揉み心地になっていく。
「こ、これは!?」
「那須温泉の湯の花だよ。温泉の湯の花を液体のままパックした純度百パーセントのすごーい温泉の素なんだ。生徒会の子がお土産にくれたんだよー」
ニンマリとした顔で見下ろす姉と目が合うと、ボクは恥ずかしさのあまり顔が火照っていくのを感じた。
ボクは何ていけない想像をしてしまったんだ!
穴があったら入りたい気分だよ!
「ねっ! 祥ちゃん、お姉ちゃんと一緒に温泉入ろっ♡」
「うう~っ……」
もう変な想像はしないぞ!
きっとこれも未熟なボクが勝手に妄想しているだけなんだ。
男女が一緒の湯船に浸かるなんてことはテレビの中だけの出来事であって、現実の世界ではあり得ないことなんだからっ。
才色兼備で完璧な姉に不釣り合いな弟と言われないように、ボクは清廉潔白な男になる!