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やる気を見せるのは今しかない

「なによショタ君! ショタ君は悔しくないの? この人達は生徒会執行部のくせに、七夕イベントなんかどうでもいいって考えているんだよ?」


 自分では思っていても口に出せないようなことを、花梨さんがどんどん言ってくれている。今、ボクの目には花梨さんがとても輝いて見えている。  


「にゃはははは、ちょこっと興奮し過ぎなんだにゃー、鮫島さん?」

「うふふふ、ホットミルクでも飲んでちょっと落ち着きましょうか? あ、鮫島さんはイチゴ牛乳が好きだったわね? 冷蔵庫に入っていたかしら……」


 名取さんと工藤さんは、鼻息荒くふーっふーっいっている花梨さんを何とかなだめようとしている。一方、鈴木先輩は少し離れた席で、化学の問題集に身を隠すように机に突っ伏している。


 生徒会長の姉を中心として団結力のあるこの生徒会執行部も、姉がいなければ決して一枚岩というわけではない。

 そこに鮫島花梨という名の強烈な(くさび)が打ち付けられようとしているのだから、これはもう、星埜守高校生徒会の大ピンチなわけで……


 花梨さんは、自分の肩に置かれた名取さんの手をパシッと振り払う。

 そして、くわっと口を開けて何かを言おうとしたその瞬間――


「皆、おっまたせーっ! 七夕イベントで使う機材が届いたよー!」


 ガラッとドアが開いて姉が入ってきた。すると花梨さんは少し前のめりになった姿勢のまま静止。

 姉の後ろには大きな段ボール箱を台車に乗せて押している沢渡先輩の姿が見えた。無口でほとんど目立つことがないけれど、生徒会の縁の下の力持ちという感じの副会長。七三分けの髪に黒縁メガネをかけている。


「さあさあー、沢渡君、早く皆に見せてあげてよー! もうーっ、めっちゃ本格的なガチャガチャの機械が届いたんだよー!」   


 2人の登場によって、これまでの緊迫した雰囲気がガラッと変わった。

 さっきまで気配を消して机に突っ伏していた鈴木先輩も、息を吹き返したように沢渡先輩の方へと駆け寄っていき、


「うわっ、なんスかこれ! 中古品どころか、バリバリの新品じゃないっスか! うひょ~、しかもなんスか? このコインの形はー!?」

「うふふ、ズゴイでしょー? キラキラ星型の特注コインなのよ。沢渡君のお家が玩具メーカーの社長さんで本当に良かったわー!」

「いやいやいや、星形のコインのガチャガチャなんて見たことないスよ? これって、完全オリジナル設計じゃないスか!」


 どんどん興奮度が上がっていく鈴木先輩。


 すると、沢渡先輩はメガネをクイッと上げる仕草をしながら、

「夢見沢に開発費に糸目は付けないと言われては、おもちゃ屋の本気を見せるしかないだろう……」

 ぼそりとつぶやいた。

 

 テーブルの上に置かれた2台の機械には、天の川に彦星と織り姫がそれぞれに描かれていて、星埜守学園の校章まで入っている。

 回転させるつまみの上には星形の凹みがあって、そこに星形のコインを入れて回すと中身のカプセルが出るようになっている。  


 すごい。

 ただロッカー番号を抽選するためだけに、一体どれほどの労力とお金をつぎ込んできたというのか。

 

 ゴクリ。

 ボクと花梨さんは同時につばを飲み込んだ。


「す、すごいわねカエデ……。あなたがこんなに本気になっているとは……」

「もちろん私はいつでも本気よ? 皆は違うの?」


 姉はきょとんとした顔を工藤先輩と名取先輩に向けた。


「も、もちろん私も本気よ……」

「う、ウチも……」 


 二人は姿勢を正してコクコク何度も頷いた。


「生徒のみんなもすっごく楽しみにしてくれているようだし。ね? 沢渡君」

「ああ。今回の企画はとても好感触のようだな……」


 メガネをクイッと持ち上げて、沢渡先輩はつぶやいた。

 信じられないという表情で顔を見合わせる工藤先輩と名取先輩。


「七夕の当日は、織り姫のコスチュームを着て屋上で待っているからね! って言ったら、どのクラスもとても良い反応が返ってきたわ!」


「か、会長の……」

「カエデの……」

「カエデっちの……」

「かいちょーの……」

「…………」


「「「「織り姫コスチューム!?」」」」


 4人の声がハモった。



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新作公開中!『馬小屋のペティ』
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