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その怒りはすぐには収まらない

 波乱のSHR(ショートホームルーム)の後、花梨さんと二人で生徒会室を訪ねてみると、中にいたのは書記の工藤美紀さんと、会計の名取照美さんの二人だけだった。


「やあやあ、1年生のお二人さん、お疲れさんにゃー!」

「他のメンバーはまだ各教室を回っているところよ。そういう私たちも、F組以外の1年生の教室を回ってきて、さっきここに来たところなの」


 いつも元気一杯な名取さんと、しっとりと落ち着いた雰囲気の工藤さん。

 二人の先輩の顔を見たらなんだかホッとした。


「で、クラスの人たちの反応はどうだったの? あなた達二人だけで上手にプレゼン出来たかしら?」

「にゃはは、そこはカエデの弟くんなんだから、楽勝だよ~にゃ?」


「うっ……」

「それは……」


 ボクらは絶句した。

 上手くできたことを信じて疑わない先輩たちに、ボクはどう報告すれば良いものなのか。

 なかなか返答しないボクらの顔を交互に見て、キョトンとした顔を向けてくる二人の先輩。


 先に動き出したのは花梨さんの方だった。

 意を決したように、すうーっと息を吸って――


「はい! とても上手にできましたー! 先輩たちに、見てもらいたかったぐらいですよー!」 

 よりによって、得意満面な笑顔でそう言ったのだ。


「ええっ!? どの口がそう言う?」

「なによショタ君。なんか文句あんの?」

「も、文句というか……嘘をついちゃ駄目だよね?」

「う、嘘じゃ……ないもん……」


 花梨さんはぷくーっと頬を膨らませてそっぽを向いてしまう。

 なにそのカワイイ反応。

 と思ってしまったボクの反応も、なにそれ?


「え、どういうこと? 七夕イベントの説明がうまく出来なかったってこと?」


 当然のように、ボクらは工藤先輩からの質問攻めにあう。

 もうこれ以上先輩たちに心配をかけられないと思ったボクは、先ほどのSHR(ショートホームルーム)での出来事を洗いざらい説明した。




「あちゃー、やっぱ、1年生の教室は全部ウチと美紀ちゃんで回るべきだったにゃー!」

「そうねえ……しかもよく考えると、弟くんくたちの担任はあの(・・)星埜守先生ですものねぇ……」

「え、それはどういう意味ですか?」


 工藤さんのものすごく意味深な言葉を聞いて、ボクは思わず食い気味に尋ねてしまった。


「弟くんもカエデから聞いているでしょ? あの先生、何かと生徒会を目の敵にしている節があるの。最近では風紀委員会を生徒会執行部の対立組織に仕立てようと躍起になっているらしいわ」

「そんな話、姉からは聞いていませんよ?」

「ええっ!? そうなの? ん~。……どうしよう。カエデのことだから何か考えがあって、弟くんに話さなかったかも知れないわ」


 工藤さんは顔から汗をたらたらと流して、オロオロし始めてしまった。


「あ、大丈夫ですよ先輩! 今の話、ボクは聞かなかったことにしますから! ね、花梨さんも……」

「あんにゃろーォォォォ」


 花梨さんに同意を求めようとしたけれど、想像を絶するレベルで激おこだった。

 小さな体をブルブルと震わせ、今にも体から炎が吹き出しそうな怒りっぷりだ。


「ショタ君! 今すぐ職員室に乗り込むわよ!」

「わわっ、ちょっと待っ――」


 激おこ花梨さんがドアに手をかけたその時、ドアがひとりでに開いた。


「うわっ、……えっ、ええっ!? きみまだ俺のこと怒ってんの??」 


 生徒会室のドアを開けたのは、花梨さんの初デートで不義理な態度をとってしまった罪で丸坊主にさせられ、最近ようやくスポーツ刈り程度に髪が生えてきた鈴木先輩だった。


「センパイ……カリンは……カリンは……怒りに打ち震えているのです!」

「ええっ、マジか!」


 頭を抱える鈴木先輩。

 そこへスルッと工藤先輩が近づいていき、鈴木先輩の肩に手を伸ばし――


「鈴木っち、また頭を丸めるんだニャー! かわいい後輩女子を泣かした罪はきちんと償わないとならないのにゃ!」

「ううっ……俺の青春……カムバーク……」


「ちょっとあなた達、これ以上話をややこしくしないでよー!!」


 工藤先輩のさけび声が旧校舎の廊下に響き渡ったのだ。 


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