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姉×萌え×ショタ ~才色兼備な姉の弱点はボクなんです~  作者: とら猫の尻尾
第二章 鮫島花梨AAは女を磨きたい《高校入学編》
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まず馬を射よ(漆)

 頭上に広がる満天の星――


 都会に暮らしているボクらには決して見ることのできない、天の川を手軽に見ることのできるこの場所はどこでしょう?


 そう、ここはプラネタリウムです!


 あ。お前は埼玉県民だろというツッコミは不要だよ?

 サイタマ都民という言葉があるくらいに、埼玉は都会なんだ。


「ん? (しょう)ちゃんまた独り言?」

「えっ、また声に出ちゃってた!?」


 この癖、どうにかしないと……

 

「あ、流れ星だよ! (しょう)ちゃん見た?」

「うん。きれいだったね!」


 姉がこんなに星が好きだったなんて。 

 ボクは姉のことを理解しているようで、じつはまだ知らない事が沢山あるのだろう。


 どうしてボクらがここに来ているかって?

 それはね……――


 フードコートでの食事を終え、ボクと姉は家に帰ろうとしたんだけれど、『一緒にプラネタリウムに行こう』と鈴木先輩に呼び止められてしまったんだ。


 チラッと花梨さんの表情を伺うと、すまし顔でクリームソーダを飲んでいた。 

 彼女が何を考えているかは知らないけれど、返答は姉に一任することにした。


 ――で、今に至るわけ。



 ボクはこれまで、姉が夜空を見上げている姿なんて想像したこともなかった。学校では生徒会の仕事で忙しく、家では部屋にこもって勉強している時以外は、ボクの面倒をみるのにつきっきり。

 だから、たとえこれが偽物だったとしても、ゆっくりと星空を見上げるようなゆとり時間が必要なんだ。


 今上映中の作品は『夏の星座』をテーマにしたもので、こと座、わし座、はくちょう座、てんびん座、さそり座の形やギリシャ神話にまつわる話をイケメン声優と人気お笑い芸人が紹介してくれるという番組だ。

 だからあまり星に興味のないボクでも、思わず聞き惚れてしまうぐらいに楽しむことができるんだ。


 番組が始まってからしばらくは頻繁にボクに話しかけていた姉の声も、今やすっかり聞こえなくなっている。姉もボクと同じく番組内容に夢中になっているんだろう。


 ――と思ったら


「ええッ!? お姉ちゃん!?」


 隣の席で星空を見上げているはずの姉の顔が間近に迫っていた。


「しーッ! 大声出しちゃダメだよ、(しょう)ちゃん。周りの人の迷惑になっちゃうよ?」


 手元も良く見えないほどに暗い場内だけれど、姉が唇の前に指を立てて、ちょっと楽しそうな顔をしているんだろうということは想像できた。


(しょう)ちゃんはお姉ちゃんの事は気にせず、星空を見上げていていいんだよ? お姉ちゃんは(しょう)ちゃんの大っきな瞳に映るとってもキレイな星空を観測しているの」


「ええッ!? そんなことって……????」


 あるのだろうか?


「めッ! ……だよ?」


 細い指先がボクの唇に触れた。

 何事にも完璧な姉の言うことは、いつでも何だって正しい。


 だからボクは星空に視線を戻す。


 視界の三分の一が姉の顔と被ってしまったり、ナレーションの内容が頭に入ってこなかったりするのだけれど、姉にとってこれが星空の楽しみ方なんだとしたら、ボクはこの時間を大切にしようと思う。



 ……そういえば花梨さんは?

 会場は真っ暗だし、二人とは少し席が離れているので様子は分からないけれど、花梨さんは星空探索をちゃんと楽しんでいるのだろうか。


 こんな時でも花梨さんの事を気にかけてしまうボクは、頭がおかしくなってしまったんだろうか。



「ううーッ! (しょう)ちゃんとの星空探索、楽しかった~!」


 場内を出ると、姉は両腕を突き上げて笑顔の花を咲かせた。

 やはり、相当楽しかったらしい。


「ならよかった。いつかまた来ようね!」

「うふっ、じゃあ~、来週また来ちゃう?」


 ボクの腕を抱き寄せ、いたずらっ子のように笑う姉。

 一瞬戸惑ったけれど、ボクたちは姉弟なんだから誰にも気兼ねする必要はなかった。

 でも、知らない人から見たボクらは、どんな風に見えているのだろうか。フツーに仲の良い姉弟に見えているのかな?


「いや~、ほんと二人は仲良しっすねー! 後ろから見てるとただのバカップルっすよー!」


 振り向くとニヤニヤ顔の鈴木先輩と、どことなく沈んだ表情の花梨さんが後ろにいた。

 

「えっ、私たちがカップルに見えちゃった~? うう~ッどうしよお~」


 頬に手を当てて体をくねくねさせる姉。

 その様子をジト目で見ている鈴木先輩。


 ボクは――


「ちょ、ちょっと花梨さんを借りますからっ!」


 戸惑う彼女の手を引いて駆け出した。


 


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新作公開中!『馬小屋のペティ』
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