【追加エピソード】不思議なお年玉!?《第3.5話・後編》
父と姉はとても仲が良すぎて、顔を合わせる度にドタバタ騒ぎに発展してしまうんだ。そんな二人がボクは羨ましい。
「新年早々、騒がしい家だこと! 一般庶民の家庭もこんな感じなのかしら? 違うのかしら?」
「うーん、どうだろう……ボクにはよく分からないや」
母とボクは、喜多が入れてくれたお茶をすすった。
「あ、そうそう。カエデにもお年玉をあげるわ!」
「はぁはぁ……あ、ありがとうママ!」
「パパからは溢れんばかりの愛を――」
「もう! 正月ぐらい姉弟水入らずで過ごさせてよーッ!」
「ぐはっ」
文字通りに〝肘鉄を食わせ〟られた父が床にノックダウン。
元敏腕刑事の父といえども、顔面への一発は耐えられないのか。
「あらあら、この家はパパとママの家でもあるのだから、家族水入らずのお正月に何の不満があるのかしら? ないわよね?」
「はぁはぁ……この状況を見て、よくそんなのんきなことが言えるね!? う~もう! 妻としてパパの操縦を責任もってやってよね!」
短時間で復帰して足にすがりついてこようとする父の手を、パシパシと手で弾きながら姉が反論する。
「――くっ! 増田君は何をやっているの? 遅い!」
するとパパの携帯に着信音が鳴った。
何か緊急の用事があるらしく、父と母はすぐに事務所へ戻ってしまった。
しーんと静まり返った部屋。
「うーん、まるで嵐が去ったような感じだね?」
「そうね。きっと虹の架かった美しい空が見られるわ」
「え、なにそれ?」
「お坊ちゃま、お嬢さま。お餅が焼けましたので、どうぞお召し上がりください」
気付くと香ばしい匂いが部屋いっぱいに漂っていた。
「あ、そうだ祥ちゃん! これお姉ちゃんからのお年玉よ!」
「ええっ!? お姉ちゃんからもくれるの?」
「うふふ、お年玉の由来は歳神さまからのお下がりで頂く玉のような形の――」
「あ、それ知っている! さっきも喜多さんから聞いたよ?」
「えっ? 喜多から……?」
ボクたち姉弟の視線を気にする素振りも見せず、喜多はすまし顔でテーブルの上にお餅を置いてキッチンへと下がっていった。
―― 第3.5話 完 ――