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姉×萌え×ショタ ~才色兼備な姉の弱点はボクなんです~  作者: とら猫の尻尾
第二章 鮫島花梨AAは女を磨きたい《高校入学編》
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【追加エピソード】不思議なお年玉!?《第3.5話・前編》

時系列しては、第1章第3話の続きとなるエピソードです。

ご愛読いただいている読者の皆様に感謝の気持ちを込めて、令和3年の元日の昼から夕方まで使って書き上げました。

 元日の朝に姉と二人で初詣に行ってきた。

 ボクは普段着の上にモフモフの襟が付いたコートを着ていったのだけれど、姉は晴れやかな色の振り袖姿だ。

 さすがは名門星埜守ほしのもり高校において、生徒会長を務めるだけのことはある。近所の神社に行くのにも、常人とは気合いの入り方が違うのだ。


 家に帰っても、すぐには脱がない。ソファーに並んで座り、お正月のテレビ番組を二人でのんびりと見ているときも、凜とした姿勢を崩さない。

 先に音を上げたのはボクの方だった。部屋着に着替えるために自室へ上がると、少し経ってから、ノックの音がした。


(しょう)ちゃんにお願いがあるの!」


 姉のお願いとは、着物の帯をグイッと引かれて、「あれぇ~」というのをやられてみたいということだった。

 ボクにはその状況はよく分からなかったのだけれど、姉の言うとおりにやってみたら、なぜか二人でソファーの上に倒れ込んでしまうというハプニングに見舞われた。



 これは、その後で起きた出来事――

 


 玄関のチャイムが鳴り、ババとママが久し振りに帰って来た。   

 いつもは忙しい探偵事務所も、正月は休みをとっているらしい。


「ほら祥太、お年玉をあげよう」

「わぁ、ありがとうパパ!」

「無駄遣いをするんじゃないぞ?」

「うん。分かっているよ。半分は貯金して、万が一のときの備えにするよ!」

「よーし、それでこそ夢見沢家の家督を継ぐ者だ! えらいぞー!」


 白い歯をキラリと光らせ、ボクの頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でてくれる。

 ボクはそんな父の男らしさが大好きだ。


「はい、ママからもお年玉よ」

「わぁ、ありがとうママ!」

「お金は権力(チカラ)よ! ちゃんと計画的に使い道を決めるのよ?」

「うん、わかっているよ! 美術部で使う絵の具が減ってきたから買い足すのと、新しく画材を買わなくちゃいけないけど、半分は貯金して、万が一のときの備えにするよ!」

「なら最高級品をきちんと選ぶこと! いい? 妥協して二番手を選んだりしてはダメよ?」

「う、うん……じゃあ今度、顧問の先生に訊いてみようかな。水彩絵の具のトップブランドはどれですかって……」

「うふふ、そうしなさい」


 満足そうに笑みを浮かべ、母のあたたかな手がボクの頬に触れる。

 ボクはそんな母のやさしさが大好きだ。


 リビングダイニングで、久し振りの親子の話に盛り上がっていると、喜多がお茶を運んできた。


「あの……ショウタお坊ちゃまへ、私からもお年玉をお渡ししても?」

「ええっ!? 喜多さんもくれるの?」


 エプロン姿の喜多は、ポケットから和紙で包まれたものを出した。

 お年玉のぽち袋というより、どちらかといえば結婚式などのご祝儀袋みたいな感じの物だった。


「なんだかそれは気が引けちゃうなぁ。うちで働いてもらっている喜多さんにお年玉をもらうなんて……。ねえママ?」

「そうねえ。何か下心が見え隠れするわねえ」

「下心など、など、など……そのようなものは決してございません!」

「ふーん……」

「奥さま、お年玉の由来は歳神(としがみ)さまからのお下がりで頂く玉のような形のお餅――であることをご存じでしょうか? つまり、中身はお金である必要はないのでございます」

「お金ではないの?」

「あ、なーんだ。お金じゃないんだったら有り難く受け取るよ! ありがとう喜多さん!」

「うふふ。中身は後で、お一人になってからお開けくださいね?」


 分厚いご祝儀袋のような物を受け取るとき、喜多は両手でボクの手をギュッと握り、にっこりと笑った。


「ははは、良かったな祥太! 皆からお年玉をもらえて! ああそうだ、そういうことなら志乃吹(しのぶ)にもお年玉を用意しておくべきだったかな?」

「はっ! だだだ、旦那さま! 奥さまの前でそのようなことは……」

「ん? そのようなことって?」

「い、いえ……これは独り言でございます!!」


 ちなみに『志乃吹』とは家政婦の喜多の下の名前。敏腕刑事だった父は、17年前に起きたある事件で、当時15歳の喜多志乃吹と運命的な出会いをしたらしい。


 喜多は、ものすごく慌てた様子でキッチンに下がっていくが、途中で何かに足を絡ませて、どんがらガッチャンと派手に転んでしまった。 


「ふうー、志乃吹は相変わらずドジっ子だなぁー。あれで家政婦の仕事は務まっているのだろうか? ――んっ??」


 廊下側のドアにすき間が空いていることに気付いた父は、何者かがじっと中を覗いていたことにようやく気付いたようだ。


「カエデちゃーん、会いたかったよぉぉぉ――――ぐはっ!」


 普段着に着替え終わった姉は、抱きつこうとする父を蹴り飛ばした。


「あらカエデちゃん、今年もよろしくね」

「パパ、ママ、新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします」

「うわーん、カエデちゃん振り袖脱いじゃったのぉー? パパも見たかったなぁー、カエデちゃんの着物姿をー!」

「だから早く着替えてきたのよ! もーっ、ちょっと離れなさいよーっ!」


 逃げる姉と抱きつこうとする父の攻防は、その後もしばらく続くのだった。



       ――――【後編へ続く】――――

な・ん・と、後編に続きます。

こんな予定ではなかったのに……。

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