★永遠のロリ巨乳になった僕と魔法が使えないエルフになったナツキ
『やぁ、やぁ。僕のために集まってくれてありがとう!』
どこからか聞こえる少年のような少女のような声。
周囲を見渡すと幼馴染の澄佳と友人の武人、那月の三人を含めたクラスメイトの姿があった。
『といっても僕が無理やり集めただけなんだけど。細かいことは置いておいて、君たちは今まで住んでいた世界とは違う世界に行ってもらうよっ!』
違う世界。
最近流行っているアレだろうか?
流行っているといっても小説やアニメ等の中での話だが。
『とりあえず優しい僕は今から三十秒間だけ君たちに話し合う時間を上げるよ! そのあとは僕の世界にゴー! じゃあ相談タイム開始!』
謎の声が言い終わると同時に幼馴染の澄佳に、友人の武人と那月が僕のところへ駆け寄ってくる。
『そうそう、これは君たちにとって第二の人生となるから、素質や能力、種族、性別、容姿はランダムで決まるから楽しみにしててね! あと開始地点とかもランダムだけど相談タイム終了時に手をつないでいたメンバーは同じ場所に転移するよ!』
「私は貴方たちと同じ場所に転移したいと思っているわ」
「私も、同じです」
「俺もだな」
「同じく」
四人の意見が一致したため、すぐにお互い手をつなぐ。
『あ、そうだ。何人で手をつないでいても同じ場所に転移できるのは二人までだから』
「どうする!?」
もう時間がない。
「大きい都市で――」
景色が切り替わり、辺り一面緑色に囲まれた森の中に立っていた。
輪を作るように手をつないでいたが、右手は誰ともつないでおらず、左手は那月の柔らかい手を握っていた。
武人の問いかけに咄嗟に答ようとしたが、途中で時間切れになったらしい。
途中までしか言えなかったが、おそらく通じたと信じて行動するしかない。
「えっと、葵君で合ってますか……?」
「合って……、あぁ、なるほど。合ってるよ、ちなみにどんな感じ?」
謎の声が素質や能力、種族、性別、容姿はすべてランダムと言っていたからあり得るかもしれないと少しは覚悟していたけれど、いざそうなると少しキツイ。
「そうですね、小柄で可愛らしい女の子ですね。イメージとしては十四才前後でしょうか?」
「確かに、那月より身長が低くなってる……。あれ、那月は髪の色しか変わってない?」
那月は空いた手で確認するように自身の体をぺたぺたと触れていく。
「全く変わっていないというわけではないみたいです。一番わかりやすいのがこれですね」
黒髪から金髪へとなった髪をかき上げて、那月は先がとがった耳を露出させた。
「エルフ……?」
僕の個人的なイメージではエルフと言えば金髪というのがある。
故に納得した。那月の髪の色だけが変わったことに。
確かに女性の中では身長が高い方であり、体型も引き締まっていて容姿も整って、胸の大きさ……、そして金髪になった今、理想のエルフと言えるかもしれない。
「エルフというと確か魔法が得意な種族、ですよね?」
「そうだね、付け加えると魔法が得意な代わりに他の種族と比べると非力なイメージかな。あと森の住民で人間よりも寿命も長い。まぁ全部アニメとかでの設定だけど」
「なるほど、魔法は使い方がわかりませんし、今は関係なさそうですね。ところで葵君はどうですか?」
最初に自身の手を見る。
小さい。男の時でもそこそこ小さかったけれど今はさらに小さくなっている。
その小さな手で体の下の方から確認していく。
足や腕も小さく、細くなっており、代わりに胸だけは那月を超え、澄佳すら超えていると思われるほど大きい。
髪は茶色と黒が混ざったような色で肩にかかかる程度まで伸びていて、触れるととてもさらさらしていて触り心地が良い。
顔は触れてもどんな感じなのかはよくわからないが、肌はすべすべだった。
気になる耳だが特に尖ったりはしておらず、獣耳のようにもなっておらず普通に人間の耳だった。
まぁ獣人がいるかは知らないけれど、エルフがいるならいそうな気はする。
「人間かなぁ……。こういう多種族がいる中での人間の立ち位置って質より量でごり押しといった感じで個人で見たときは特に秀でたものがなくバランスがいいけれどって感じかな」
「数の暴力というやつですね。……これは手紙?」
空から二つ何かが僕たちの足元に振ってきたものを拾い上げ、上を見上げるが何も見つからない。
手紙の宛名のところには、
――元、五日葵様へ
と書いていた。
封を切り、中に入っている便箋を読んでいく。
――やぁ、僕だよ。
この僕の世界は既に知っている人もいるかもしれないけれど、人間以外の種族がたくさんいるよ!
君たちが好きな魔法も存在するよ! 使えるかは君たち次第だけどね?
さて、前置きは終わらせて本題に入るよー。
君たちにはこれから課題を与えていくよっ! 最初の課題は今から一か月間生き残ること!
今回の課題は達成できないイコール死だから未達成時の罰はないけれど、次回からは天罰が下るというか、下すから頑張ってね!
あと、僕も君たちを殺したいわけじゃないから、自分のステータスを視れるようにしてあげてるから、ステータスと念じてみるといいよ!――
いろいろ気になるところがあるけれど、まずはステータスを確認するべきだろう。
ステータスと念じると、脳内に文字が浮かび上がる。
――名前『イツカ・アオイ』
――年齢『13』
――種族『人間』
――性別『女』
――スキル『不老』
年齢や性別はよくないけど、いいとして、気になるのはスキル。
スキル名の『不老』だけでどんな効果か大体イメージできるけど、取り合えず詳細を見たい。
そう思った時、脳内の文字がスキル『不老』の詳細を示す内容へと変化した。
――スキル『不老』
――体の成長が止まり、その状態を維持する。死ぬまで老いることはない。
「えっ……」
体の成長が止まる……。つまり、ずっとこのままなのか。
「葵君はどうでしたか? 私は……、魔法使用不可というものでした」
普段から表情には感情が出にくいため、わかりにくいが今の那月はあきらかに落ち込んでいた。
「こっちは戦闘に関係ないスキル『不老』だったよ。那月のスキルの詳細を教えてもらってもいい?」
「スキル名は『魔法使用不可』で、魔法が使えなくなる代わりに魔力の扱いが上手くなる、ですね。魔力の扱いが上手くなれても魔法が使えなければ意味がないと思うのですが……」
「意味がないなら補足しないだろうし、魔力だけで出来る事といえば……身体強化とかかな?」
種族としては非力なエルフが身体強化するのはどうなんだろうとは思うけれど、魔力量が多いほど効果が高くなるとかあるだろうし、そう考えると……。ただ、魔法使用不可のデメリットに釣り合うのかどうか……。
「なるほど、全く意味がないスキルというわけではないみたいでよかったです。しかし、葵君のスキルが羨ましいですね」
「エルフの那月もあんまり変わらないと思うんだけど……。って、そういえば那月の種族ってエルフだった?」
「はい、エルフでしたよ? それよりもあんまり変わらないってどういうことですか?」
「エルフが出てくる作品の大体では若い期間が長いっていうのが多いんだよね。作品によっては寿命が尽きる間近になるまで老いることがないっていうものもあるよ。だから多分同じ感じじゃないかなと」
「もしそうなら嬉しいですね。さて、これからどうしますか?」
今僕たちがいるのは森の中。
澄佳と武人の二人と合流したいし、とりあえずは街に向かうべき……。
いや、女になって非力で小柄になった自分と容姿が整った那月は狙われやすいし、身を守る力がないまま街にいくのは避けるべきか……?
この世界には奴隷制度があるかもしれないし、慎重に行動すべきだろう。
ある程度、戦えるようになるまで街に行くのは避ける……?
手っ取り早く戦えるようになるには武装するのが一番だけど、武装するためには街に行く必要がある。
そのことを那月に伝える。
「確かに葵君は元々整った容姿が女らしくなって胸も大きいですし、狙われやすそうですよね。街ではなく人が少ない小さな町や村などはどうでしょうか?」
人が少なければその分危険も減るだろう。なるほど、いいかもしれない。
「それで行こうか。そこで戦える態勢をとってから大きい街に行って澄佳達を探そう」