蘇る伝説
魔法陣に入りテレポートした場所は、一帯に浅い水溜まり程度の深さの水が貼ってあり、空一面が雨雲に覆われている。今までに見た事のない場所だった。
そして、その場所に俺と父さんでは無い人が立っていた。
「ここは何処だ?」
「ここは、あの世界ともう一つ存在する世界の境だ。我が貴様らと戦う為に態々用意してやったのだ」
「そりゃどうも」
この話し方からすると、目の前に立っている人は邪龍だろう。なぜ人の姿になっているのかは知らないが、恐らく能力による変身だろう。
「さて、それでは貴様の実力を見せてもらおう……と、言いたいところだが、まずはデュオンからだ」
「――?別に俺は後でもいいだろうに」
「我はわかっているぞ。貴様の命は、持っても後一時間程度だということに」
「父さん、どういうことだ?」
父さんはあの時に「女神に生かしてもらった」と言っていた。命がもう持たないということは、生かされたと言っても、ほんの数時間だけ存命時間が伸びたとでも言うのか。
「所詮は人間、何らかの手段を用いた長寿でも限界はある。それに、貴様は一度死んでいる」
「気付いていたか。そうだ、お前の言う通り俺はもうすぐ死ぬ。今の状態から女神の存命を受けても効果はないしな」
女神様の存命を受けても効果はないというのは、もう存命を伸ばすことはどうやっても不可能ということ。もしも命が続いても、精神的はわからないが体は必ず死に至るだろう。
「俺の体は作り物、人形みたいなもんだ。人形は段々劣化していき最終的には修復不可能な程に壊れる。そして、今の俺の状態は、その最終的の場面スレスレということだ」
「だからこそ、今の内に貴様とは決着をつけたい」
「……そうだな。どうせならお前を弱らせて死にたいしな」
「フン、負ける前提か」
父さんが俺の前に出て行き、人の姿をした邪龍と対峙する。
英雄と邪龍の再戦……まるで、昔の伝説が蘇ったみたいだな。
「「行くぞ!」」
二人が同時にそう叫ぶと、父さんは片手に大剣を創造し、邪龍は背中から龍の翼を生やして猛スピードで接近して行く。父さんは大剣を振るい、邪龍は手からブレスのようなものを出して攻撃する。
「その攻撃は効かんぞ!」
邪龍の攻撃は父さんが体に纏う鎧が無効にする。つまり、今の父さんには物理攻撃以外は聴かないということだ。
「だが、やはり歳をとったな。動きが以前よりも遅いぞ」
「チッ……!」
邪龍はブレス攻撃を防がれたことよりも、父さんの動きについてを言う。それほどに余裕があるという事だ。やはり、万端ではない父さんでは邪龍に勝つことは出来ないのか。
「シャドークロー!」
「!」
父さんの攻撃を回避した瞬間に、邪龍はその鋭い爪で父さんの左腕を切り裂く。すると、父さんの左腕の切り裂かれたところからが床にぼとりと落ちる。
――切断された。
「ふむ、体は人形でも血は出るみたいだな」
「と言っても、これは血に見せかけたただの赤い液体だけどな」
言葉では余裕こいているが、実際は片腕がなくなったことでバランスが悪くなっている。大剣を片手で振れば、重さで体のバランスを崩し大きな隙が現れる。
これはまずいと思ったのか、父さんは大剣をその場に刺し、新たにいつも俺が使っているくらいの大きさの剣を創造する。
「射出!」
「無駄だ!」
父さんは邪龍に向かって剣や斧などの武器を射出するが、龍の翼を持つ邪龍の人型形態にはあまりにも動きが速い為あてることがでいない。先を読んで射出しても、その武器の速さを目で追える邪龍にとっては避けることなど容易い。
「それに、貴様の無属性武器やただの属性付与武器では、我に効果は薄いことを知っているであろう」
「ああ。だが、生憎今回はフェイトがいないんでな」
「ふむ、その名を聞くのも懐かしい。確か、貴様の創る武器に龍属性を付与させた者だったか」
話を聞く限り、邪龍には「炎」や「水」などの属性の通りは良くないようだ。そして、今邪龍が言った「龍属性を付与」という言葉から、奴にとって龍属性とは弱点属性なのだろう。
ただでさえ、龍属性を持つ者は少ないのに龍属性以外の通りは悪いなんて、邪龍を封印するのに手こずるのも頷ける。
「だが、今回そやつはいない。故に、貴様では我を倒すことは愚か、封印すらできん」
「知ってるさ。今俺ができることは、どれだけお前を消耗させることが出来るかだ」
「フン、やってみるがいい。シャドーブレイス!」
邪龍はまたも手からブレスを出す。しかし、先程のブレスとは違いやけに細かい物質で出来たブレスだった。
「効かん!」
ブレス攻撃ならば効果はない、と思っているであろう父さんはそのブレスに突っ込んで行く。
しかし、ブレスの中に入った途端に父さんの様子がおかしくなる。一体どうしたのだろうか。
「な……ぜ……」
ブレスを無効にする鎧を装着していたはずなのに、何故かダメージを受けた。そして、痛みで膝を床についてしまう。
「このブレスは特殊でな。ブレスを作る物質の一つ一つの大きさが人間の細胞以下のサイズで出来ている。つまりだ。その鎧によっていくつかのブレスを作る物質を消されてもいくつかの物質がその鎧を作る原子の隙間を通り、内部に攻撃するということだ」
「通りで鎧じゃ防げねぇわけだ」
先程のダメージの影響か、父さんが纏っていた鎧が少しずつ剥がれていき、ついには鎧はなくなってしまう。
「俺のダメージからすると、これが最後の一撃になる。だから、全身全霊本気の一撃で来い!」
「いいだろう。今の我が使える最大の一撃を与えてやろうぞ」
これが最後の一撃ということで、二人ともその最強の一撃を放つ構えをとる。すると、二人の体からとてつもないオーラが見える程に滲み出てくる。
「シャドーインパクト!」
「ディステニーブレイク!」
父さんは全武器と全属性を融合して創造した剣を。
そして、邪龍は自身の両爪にブレスを纏わせ猛スピードで突っ込み、ぶつかった。
瞬間、眩しい光と共に闇が二人を中心に現れ二人の姿が見えなくなる。
そして、二人を中心に発生していた光と闇が晴れると、そこには……。
度々出てくる技名はその場のノリで考えたものです。




