撃退戦
「属性創造・雷、前方投擲!」
俺は、剣を四本ほど創造しファス・ブラドに投擲するが、全て体を覆う強靭な鱗によって弾かれる。
流石に、そこらの魔物を両断出来る切れ味では弾かれるか。
「三連アイスランス!」
リアラも氷属性の上級魔法であるアイスランスを三連続で打ち込むが、ほんの僅かの目眩ましになっただけで、怯む様子を見せない。
「魔法でも駄目か……」
「何か弱点はないのでしょうか」
「わからない。だが、もしかしたら何が耐性が低い属性があるかもしれない」
「なら、私は引き続き魔法で攻めます」
どんな生き物にも弱点は必ず存在する。それを見つけなければ、俺達がこいつを撃退するなんてことは不可能だろう。
「……龍属性は最後の手段だぞ」
「わかってますって」
バイクの音があるので心配する必要は無いと思うが、念のためにリアラに聞こえる最小限の声で話す。
「属性創造・水」
次に俺は、水属性を付与した剣を創造。
水属性を付与した剣を振ると水が出ることはガルメで既に検証済みだ。
この性質を利用して、俺はファス・ブラドの足元に向かって剣を振り、前足と後ろ足の両方に大量の水を掛けていく。
「リアラ!」
「ブリザード!」
強い吹雪と辺り一帯の温度を下げるブリザードをリアラが発動すると、先程俺が水を掛けた前足と後ろ足が固まって行く。
完全には止められないとは思うが、少しの時間稼ぎにはなる。
「試した属性は?」
「龍、火、光、闇、風以外の属性魔法は全て試しましたが、聞いた様子はありませんでした」
「風属性は、ブリザードが効いていないところを見ると、恐らく効かないな」
ブリザードは、氷属性と風属性を複合した魔法だ。
ブリザードが効かない=氷属性と風属性は効かないということだ。
火属性は、ここの森が燃える可能性大なのでなるべく使用は控えたい。
「グギァァァォォォォッッッ!!」
「うっ……!」
「み、耳が……!」
「ちょ……ここでその咆哮は……!」
攻撃されて流石に鬱陶しいと思ったのか、咆哮をあげて怒りを露わにする。
「くっ……エレナ、大丈夫か!?」
「な、なんとかね……」
よかった。もし今の咆哮でエレナが気絶でもしたらバイクの操縦が不安定になる。
それどころか確実に事故る。
「ガルメであのゴブリンの咆哮を直で受けちときに何かと耐性が出来たのかな?」
「流石エレナだな」
「はいそこ! 次の攻撃が来ますよ!」
俺が再び、ファス・ブラドに目を向けると、ファス・ブラドは先程とは違う体勢で突進を始め、更に速さを増す。
「くっ、属性創造・光・闇、前方投擲!」
光と闇の属性を付与した剣を幾つか創造し、それを投擲するがやはり鱗によって弾かれる。
だが、顔を掠った一本だけが弾かれなかった。
「まさか……」
試しにもう一本剣を創造して、ファス・ブラドの顔に向けて投擲する。
すると、顔に当たる寸前でブラド・ブラドがサイドステップで回避する。
間違いない、顔には体ほどの硬さを持つ鱗がないんだ。
「弱点は顔だ!」
「了解!」
弱点がわかった途端に、俺達は弱点の顔に向けて集中攻撃を仕掛ける。
ある程度の攻撃はファス・ブラドも回避出来ているが、やはり完全には回避出来ないらしく、顔の所々に傷が付いている。
これでダメージを与え、最後は撃退するというのが理想だが、あれだけ動いていれば疲れは溜まるので、相手の疲労を狙って撃退するのも悪くない。
「スドラ!」
「ちょっ!」
リアラが俺の攻撃に混じって龍属性魔法を打ち込む。
流石のファス・ドラスでも、この攻撃には動物的直感で危険と感じたのか、全力で回避するも途中で俺が投擲した剣に辺り動きが鈍る。
そして、リアラの龍属性魔法はファス・ドラスの左の前足に命中した。
すると、命中した部位の鱗が剥がれ、肉が剥き出しになる。それと同時に、ファス・ブラドがバランスを崩し盛大に転ぶ。
「やっぱりさぁ……」
「何ですか?」
「龍属性って卑怯じゃない?」
「卑怯が故に最強なのです」
「ごめん、ちょっと何言ってるの?」
倒れているファス・ドラスは直ぐに立ち上がるが、攻撃を再開せずにそのまま真上にジャンプし、俺達とは真反対の方向に滑空して行く。
「撃退……したのか?」
「そのようです」
「二人共、結構ギリギリだったね」
バイクの進行方向と同じ方向を見ると、既に肉眼で確認出来る程の距離に街があった。
エレナの言う通り、結構ギリギリだったようだ。
「取り敢えず、危機は去った」
「思ったより早く終わりましたね」
「そうだn……今なんて言った?」
「だから、思ったより早く」
「全員直ちに周囲を警戒!」
そのセリフを言う時は、大体何かしらの良くない出来事が続けて起る。
確率としては、それはもう「やったか」に匹敵する程である。
——そして、俺の予想通りにその出来事は起きた。
「——!!」
エレナが何かに反応し、反射的に短剣を振る。
「攻撃!?」
エレナが反射的に斬ったのは矢だった。飛んで来た方向は間違いなく街の方向だ。
「そこの三人組!動くな!」
街から大きな声で何か聞こえてきた。話し方と言いさっきの攻撃と言い、明らかに友好的ではない。
「貴様らが我ら翼竜族の街に何の用だ!」
「翼竜族……?」
「翼竜族だと!?」
この街はどうやら翼竜族の街らしい。恐らく、ガルメでレナから聞いた街とはここのことだろう。
「だとしたら、まずいな……」
「何がまずいんですか?」
「この街がレナの話していた街なのだとしたら、言わばここは邪龍神教に支配されている街だ」
「……つまり?」
「奴らにとって、俺達は敵でしかないってことだ」
このままここにいれば、奴らの絶好の的だ。
取り敢えず、今はこの場を離れるしかない。
「エレナ、運転変われ!」
「了解!」
エレナと運転を交代し、全速力でこの場を離れる。
「逃げるか……だが、そうはさせないぞ!」
しかし、それを逃がさないと言わんばかりに翼竜族達は矢を放ってくる。
「シールド!」
リアラが物理攻撃を防ぐ魔法——シールドを展開させて攻撃を凌ぐが、先程の戦いで龍属性魔法を使ったのでかなりの量の魔力を消費している。
リアラの魔力が無くなるのも時間の問題だ。
「くっそ、いくら何でも今回不運働き過ぎだろ!」
自分の不運を恨みながら走っていると、森の方から誰かが俺達に手招きをしているのが見えた。
「ここは一か八か……!」
俺は手招きをしている人の方に向かって走り出す。
森に入る瞬間に二人は驚いていたが、何故森に入ったのかを理解したのか、矢の防衛に戻る。
ここは森なので、相手からしても俺達の場所を捉えるのは至難の業だ。矢も木に当たって数が減っている。
暫くすると、攻撃が完全に止んだ。
「何とか逃げ切れたようだな」
「にしても、森に入るなんて無茶よくしたね」
「死ぬよりはマシだろ?」
俺達が話をしていると、森の奥から誰の気配を感じた。
俺達は、バイクから降りると戦闘態勢に入る。
「おいおい、そんなに身構えなくてもいいだろ」
何処かで聞いたことのあるような男の声がした。
そして、森の奥から出てきたのは……、
「よっ、ガルメ以来だな」
「お前は……ディン!?」
俺がガルメにて共闘した男、ディンであった。
ディン君再登場。
と、言うことは……。




