タルベスに向けて
第四章の最終話です。
朝日が昇る。その頃に、俺はタルベスに向かう準備をしていた。
「後は、食料だけだな」
食料についてはアレを取りに行くついでに買うつもりだ。
俺は準備が終わったが、他二人の準備が終わったかはわからない。だが、リアラに関しては既昨日の内に終わらしているだろう。
「シロウさん!手伝って下さい!」
「ん?あぁ、わかった」
まだ朝早いと言うのに隣の部屋からヘルプコールが聞こえた。一体何用だというのか。そう思った俺は、特に急ぐことなく隣の部屋へと向かい、ノックをして返事が聞こえた後に部屋へと入る。
「すみません。この衣服を少しだけ持ってくれませんか?」
「……まだ、その服を持っていたのか」
「それは勿論です」
今、リアラが苦労しているのはリアラ自身の服とガルメで俺が着ていた女物の服を入れることだった。
「あ、その服を着て今日は出掛けるなんてどうでしょうか」
「結構。それに、今後も着るつもりは無い」
「えぇー、勿体ない……」
「えぇー、じゃねぇよ」
リアラの発言に適当な対応をしながら、リアラに頼まれた分の衣服を持って部屋から出て行く。
その帰り際にエレナの部屋の前に行くと鼾が聞こえた。
「……ま、いっか」
別にまだ出発する気は無い。それまでの間をどう過ごすかは本人次第だ。だが、俺とリアラの場合は起きた後に急いで準備する必要を無くすために早起きして準備をしているだけだ。それに、健康にもいいしな。
「それにしても、何気に服の量が増えてないか?」
自分の部屋に戻り、改めて考えてみる。
あの服の量は、ガルメを出た時よりも少し増えていた。あの時は俺が衣服を入れていたんだからわかる。
何故量が増えているのかは恐らく、昨日にでも買ってきたのだろう。一体どこから服を買うお金を調達したのか。
「……念の為、財布を見とくか」
これは念の為だ。決して、俺の財布から使ったのではないかなんて思ってはいないし、リアラを疑ってもいない。
そして、俺は自分の財布の中身を見る。
その瞬間、俺は氷になったかのように固まった。
「………あるじゃん」
どこかから「あるのかよ!?」という声が聞こえた気がするがただの幻聴だろう。何故なら、俺の部屋には俺以外いないからだ。
そして俺は、エレナが起きる三時間の間はずっと剣のストックを創造していた。
* * * * * * * * * * * *
宿を出てから数分、俺達はとある場所にアレを取りに行くために向かっていた。途中、俺はふと思った。
「昨日に復興を開始したって言うのに、もう復興完了してないか?」
「それは私も思いました」
「しかも、前よりも発展してるような気がするしね」
周囲を見渡すと、所々に高層ビルが建設されていたり地面を浮く車が沢山走っていたりと、言ってしまえばドラ〇もんの二十二世紀状態だ。
一体何をどうしたらこうなったのであろうか。
「お、あんたら昨日の客か。何か用でも?」
「あ、ああ。昨日預けたアレを貰いに来た」
「おう、アレか。少し待ってな」
ここは機械の部品や組み立て専門の店だ。ここも、昨日の内はよくある店と同じくらいの大きさだったのに、今では車が数十台は入るであろう大きさになっていた。
それに、店の後ろには工場らしきものが見える。恐らく、あの工場もこの店の所有しているものだろう。
「これだろ?このバイク……で合ってるよな?」
「間違いない。それと、昨日渡した設計図の物は……」
「そう焦るなって。勿論完成しているさ」
昨日、俺はこの店の店長にバイクを預けたがそれ以外のことも頼んでいた。それは、「サイドカー」の作成だ。
一つのバイクに三人が乗るとなるとかなり窮屈になる。それを改善するために、俺は研究所で研究所の設計図と一緒に見つけたバイクとサイドカーっぽい設計図を渡してサイドカーを作らせておいた。
「シロウさん……一体何処でそんなものを?」
「研究所に重要資料室ってあっただろ?そこにあった研究所の設計図と一緒に何枚か持って来た」
「何枚か……と言うことは、まだあるのですか?」
「まぁ……あるっちゃあるが、それは後で話す」
「わかりました」
取り敢えず、資料についての話は終わらせた。別に、資料の内容が大したものでなければ今この場で説明してもいいのだが……。
——もう一枚の資料がナイトメアヘルについてのだしなー。
正確には、ハオリが作ったであろうナイトメアヘルについての研究記録だ。だがどっちにしろ、デモービルの住民がいるこの場で話すのは不味いことに変わりない。
「取り込み中悪いが、先にこいつを見てくれ」
店長は店の奥からサイドカーを一人で押しながらこちらに来る。
「流石は悪魔ってところか?」
「ああ。俺達悪魔は人間よりも力が強いんでな」
店長は押してきたサイドカーをバイクに取りつけ始める。その後、店長は「それと」と付け加え……、
「このバイクを少し改造来ておいた」
「変な改造じゃないだろうな……?」
「そこん所は心配すんな。改造と言っても、振動を限りなくゼロになるようにしたくらいだからな」
「それは素直にありがとうと言っておこう」
走る時に振動がないということは、ガタガタの道でも安定した走りが出来るという事だ。
——これを便利と言わず何と言う?
「その他色々と調整しておいた」
「……流石は悪魔ってところだな」
「シロウさん、それさっきも言ってました」
「それ以外の言葉が思い浮かばないんだから仕方ないだろ」
確かに、全てを悪魔だという理由で片付けるのはよくないと思うのだが、こんなにもサービスして貰えば誰でもそう言わざるを得ないと思う。
「えっと……いくら払えば」
「代金はいらねぇ」
「……マジっすか」
「ああ。俺達を助けてくれたお礼だと思ってくれ」
「……そうか。ならお言葉に甘えさせてもらおう」
「そうしてくれ」
という訳で、これら全てのことを無料にしてくれた。元いた世界では、生涯に一度あるかないかのことをこの店の店長はしてくれた。
この店長は商業界の神か何かか?
「……また来る」
「それはありがたいな。そのバイクについてはもっと詳しく調べたいしな」
そう言い残し、俺はバイクを押しながら店を出た。
店を出てすぐにある食品が売られている店である程度の食料を買い、街の出口へと向かう。ちなみに、その食品店でも無料とまでは行かないが、半額に値引きしてくれた。
暫くし、俺達は街の出口に到着する。
最初に入った時は、今まで見た出入口と変わらなかったが、今は違う。
他の町では当たり前の壁と扉で作られた出入口ではなく、真っ白の壁と全自動の扉になっていた。
「いくら何でも、ここの悪魔の科学力はおかしいだろ」
「同感です」
「リアさんと同じく」
俺達は、改めてデモービルに住む悪魔達の科学力に驚かされた後に、俺はバイクに跨り、二人はサイドカーに乗ってタルベスへ向かった。
この出発は、一つの街での話の終了。そして到着は、また次の街での話の始まりである。
このループが続けば、人は何時しか旅を終結させて一つの街に住むようになる。
だが、シロウ、リア、エレナの三人を含む一部の生物は例外である。この一部の生物は、平凡に過ごす人とは違い、生きていれば必ずやって来る運命がある。
そして、三人の生死を決める運命は、三人が思うよりもすぐそこまで来ていた……。
物語は次章で終盤に突入します。
一体、三人の生死を決める運命とは何なのでしょうか?




