夢の中での出来事 2
「俺が元々この世界にいた人間って……どういうことですか?」
女神様の言っていることの意味が俺には理解出来ない。俺自身、生まれは向こうの世界でここには憑依という形で来たのだと思っていた。実際、その時に女神様はそう説明していた。
「すみません、あの時は嘘をつかせてもらいました。
急に全てをお話したところでシロウ様には呑み込めないと思いましたので。それに、自分でも他の人とは違うと思ったことが幾度があるのではないですか?」
「———」
確かに女神様の言う通り、傷の治りの速さが異常だったり、初めて剣道をした時に妙に構えが様になっていたりで、他の人とは明らかに何かが違っていた。
俺がこの世界に来て初めての戦闘の時、剣道での俺の実力で戦えたと思っていたが、今考てみれば、剣道が強くてもあれ程の動きは俺には出来ない。
「これが、シロウ様が今まで感じてきた違和感の正体です」
「……それじゃあ、殺された両親は実の親じゃないってことですか……?」
「いえ、確かにあの方達は両親です。ただ、桜木 士郎様の両親であり、シロウ サクラギ様の両親では無いというだけです」
——俺はこの世界で生まれ、この世界で育った?
女神様に言われた事を俺は認められず、何故あの世界に俺はいたのか、俺は一体何者なのか、という疑問が次々に出てくる。
「色々疑問は出てくると思いますが、あと一つ話すことがあるので、質問はまた今度でお願いします」
「……わかりました」
「ありがとうございます。では、二つ目『シロウ様の能力』についてです」
能力……つまり、俺が持つ『創造』『高速思考』『不運』の三つのスキルのことだ。この三つのスキルは、この世界に来る際に女神様がくれたものだ。
それが一体どうしたと言うのだろうか。
「その三つのスキル……実は、シロウ様がまだこちらの世界にいた時に持っていたものと全て同じスキルなのです」
「……さっきの話の時点でそうではないかとは思っていましたが……」
俺にはこの世界で生まれたという記憶が無い。だが、もし女神様の話が本当なのだとしたら、この世界に来る際に貰ったスキル三つは、元々この体が持っていたものでは無いかと既に予想出来ていたことだ。
「それと、恐らくシルバーさんからシロウ様に返してもらった力がありますよね?」
「ああ、俺の力の一部……でいいんですよね?」
「その通りです。その力は間違いなくシロウ様のものです」
「でも、一部ってことはまだ他にもあるってことですよね?」
「はい。まだシロウ様の力の一部は二つあります」
「二つ……」
こんなにも広い世界の何処かにある、その俺の力の一部を探すとなるとかなり時間を費やすことになるだろう。だが、それは何の手がかりもないときの話だ。
「……その力がある場所を、女神様は知ってますよね?」
恐らく、俺の力を分散させた犯人は女神様だ。だったら、分散させた場所を知っている筈だ。
「……気付いてましたか」
「はい。ヘルが持っていた俺の力の一部は、女神様から預かったものだと聞いた時点で」
「……シロウ様が言う通り、私はシロウ様の力の一部がどこにあるのかを知っています」
「それでは、その場所は「ですが」はい?」
「今話せるのは、その二つの中の一つだけです」
「な、何で!?」
俺は二つの場所を覚えられないほど馬鹿じゃない。
二つの内一つしか話さない理由がイマイチ理解できない。それどころか一気に二つの場所が分かれば、より効率よく力を手にすることが出来る。
「その理由はシロウ様自身でお考え下さい」
「…………」
「いずれ、その理由がわかります。その時こそ、シロウ様自信が真の意味で強くなったということです」
真の意味——それが何を表すのかは今の俺にはわからない。だが、今ここで全ての力の場所を聞くと大切な何かを忘れるような気がした。
「今伝えるべきことは全て伝えました。それではシロウ様を現実世界に戻します」
「ああ。……でも、一つだけ質問させてください」
「なんですか?」
「……貴方は、一体どこまで俺のことを知っているんですか?」
「………」
俺の質問に女神様は考えるような仕草をし始める。
そして、暫くすると答えは出たのか考えるのを止めてこちらを向いてこう言った。
「秘密です♪」
その言葉を聞いて間もなく、俺の意識は遠のき始める。いや、ここでは夢から覚め始める、と言った方がいいのか?
「あ、それと、シロウ様自身の力を使った影響が体に出ていると思いますが、別に病気とかではないので安心してください」
「え、ちょっ、どうi——」
女神様の何やら気になる発言に俺が反応した瞬間に俺の意識(夢の中ではおかしい話だが)は、俺が眠る時と同じように闇に落ちた。
* * * * * * * * * * * *
宿の一部屋で昼寝をしていた俺は目を覚まし、ゆっくりと起き上がる。部屋にある窓からは夕日が差し込んでいる。
「もうこんな時間か……少し寝過ぎたか?」
起き上がって初めに見たものは、机の上にある紙切れだった。
その紙切れは昼寝の前にはなかった。ということは、夢の中で言っていた俺の力の一部がある場所が記されている筈だ。
紙切れには俺の予想通り、印の入ったこの世界の世界地図とその下に『女神より』と書かれていた。
「さてと、そろそろ時間だし下に降r………」
俺が下の階に降りる為、部屋から出ようと扉の方向に向く。だが、その途中にある鏡に移る自分を見て俺は固る。何故なら……。
「………銀髪に……オッドアイ……だと……?」
鏡に映る俺は、中途半端に黒髪と銀髪が生えており、両方黒色の瞳だったのに左目だけ真紅の瞳になっていた。
どうやらこれが、女神様が言っていた『力を使った影響』なのだと、そう俺は理解した。




