研究所探索 2
今いる場所は研究所の地下三階。これだけ機械だらけの研究所でもエレベーターがなかった為、階段を使わなければならなかった。全く面倒な研究所だ。
「地図によると……ここを真っ直ぐ進んで三つ目の角を曲がれば実験室だよ」
「……なぁ、その取ってきた地図別に俺が見てもいいんじゃないか?」
「ダメ!この地図をシロウに渡しちゃうと私の出番が無くなるから!!」
今回といい前回といいメタい話だな。
それより、目的の実験室はもうすぐだ。もし的外れなら別の場所を探すという手間がかかるが、ドンピシャの場合はそんな手間なくさっさと戻れる。
それから特に何も起きずに曲がり角まで来る。
「研究所だから何か来るかと思ったけど、この調子じゃあ思ったより楽に終わりそうだね」
「おいバカ、ここでそういうことを言うな!」
「ほぇ?」
ガシャン!!
エレナの間抜けな声を出した直後に背後から物音がした。背後を振り返って見ると、そこには人間と魔物を足して二で割った様な姿をした生命体がいた。
「ほら、エレナがあんなこと言うから」
「何で私!?」
こういう時に例の言葉を言うと、思いもよらない厄介事が起きるお約束だ。俺の世界では下手すりゃ子供でも知ってる常識だぞ。
「たheけm……たLpえs」
「何を言ってるの?」
「わからない。だが、今は相手をしている余裕はない。さっさと行くぞ!」
「了解!」
「わaとmtいeぇ」
後ろから聞こえる声を無視して角を曲がる。そして、その先には実験室と書かれたプレートと扉があった。後ろからさっきのやつが追って来ているかもしれないのでなるべく速く走る。
ある程度進んだところで来た道を振り返ると、さっきの生物がいた。
——間違いない、追ってきている……!
「実験室まで全力で走るぞ!」
「その後は?」
「俺が剣を作って扉が開かないようにする。幸い、扉はドアノブが無いスライド式の扉だしな」
スライド式の扉はドアノブがある一般的な扉とは違い、棒などを使えば開かなくすることができる。
だが、今回は棒ではなく剣だ。頑丈さでは剣の方が上だが刺さってしまう。時間が経つ毎に扉は開いていくだろう。
そう考えている内に扉に着いた。俺は急いで扉を開け、エレナが入ったことを確認した後に扉を閉める。
そして、頑丈さを最高まで高めた剣を創造し扉が開かないように立て掛ける。取り敢えず危機は脱した。
「シロウ……あれ見て」
「ん?」
エレナが俺とは真逆の方向を見ながら言う。
「これは……ナイトメアヘル?」
俺がエレナと同じ方向を見ると、地下一階より遥かに多い量の実験器具とパソコンがあった。そして、パソコンの画面に映し出されているのは、ナイトメアヘルのスライム体だった。
恐らく、ここでナイトメアヘルの研究をしていたのであろう。
俺がそう考えていると背後にある扉からガタッと音がした。
「のんびりしている暇はないか……」
ここでナイトメアヘルの研究をしていたというのなら、デモービルの住民達は間違いなくこの部屋のどこかにいる筈だ。
「見て、実験保管室だって。あそこにいるかも」
「それじゃあ、エレナはそこに行ってきてくれ。俺は別の場所を探す」
「わかった!」
そうして、エレナは実験保管室を。俺はこの部屋をと二手に別れて探すことにした。
「さてと、何処からさ「いたよ!!」早いな!?」
何処から探そうかを決めようとした瞬間に実験保管室に行ったエレナの声が聞こえた。
これだと、さっきの「二手に別れて探すことにした」というくだりがただの文字数稼ぎじゃないか。
「しかも、ご丁寧に「全住民」と書いたプレートまでありますよ!!」
「少しは疑えよ!」
俺は急いで実験保管室に向かう。
エレナの性格上、すぐに変なスイッチを押す気がする。
——そして、運の悪いことに俺の予感は的中してしまった。
ブーブーブーブーブーブー!!
「な、何だ!?」
『自爆装置が作動しました。自爆装置が作動しました。この操作を中断することは出来ません。作業員と研究者の皆様は直ちに脱出してください。なお、自爆時間は三十分後です』
明らかにヤバい感じがする警報音と音声放送が聞こえる。
大体の自爆装置の作動には何者かによる操作が必要。そして、この研究所にいるのは俺とリアラとエレナの三人だからこの中の内の一人が犯人ということになる。
まず俺はここにいて何もしていなかったので犯人ではない。リアラも魔力を送るのに精一杯だ。それに、地下一階に自爆スイッチを取り付けているとは考えづらい。
ということは……。
「シローウ、住民の皆を助けたよ〜!」
「……エレナ、何か変なボタン押さなかったか?」
「えっと……ごめん!適当にいろんなボタンを押してたから覚えてない!」
「はぁ……んで、その住民達は何処にいるんだ?」
「ここに全員います」
エレナに救出した住民達の居場所を聞くと、間もなく一人の男性の声が聞こえた。聞こえた方向を見ると、そこには大勢の翼を生やした人達がいた。
——間違いない、悪魔族だ。
「よし、それなら早く脱出するぞ」
「でも、入ってきた入口にはあの謎の生命体が……」
「大丈夫です。この部屋には地下一階に続く緊急用の梯子があります」
「ならそれを使おう。場所は何処に?」
「丁度そこのお嬢さんが立っている横にあります」
そう言って、悪魔族の男性はエレナの隣にある冷蔵庫ぐらいの大きさの扉を指さした。
それと同時に、今まで剣で抑えていた扉が大きな音を立てて前に倒れた。そして、謎の生命体が実験室に入ってきた。
スライド出来ないからって扉を倒すことないだろ。
「アイツは……!」
「……エレナ、住民達を連れて先に行け。ここは俺が食い止める」
「……シロウは……いつもいつもそうやって……」
「……自分に害あることが起きるだけが不運じゃない。俺は死ぬことの出来ない不運を持つ男だ」
「シロウ……」
「安心しろ、絶対に無事に帰る」
「……約束ですよ」
「ああ」
その後、エレナは住民達と一緒に扉の先へと入って行った。
「さて、逃げるか」
この時の俺は謎の生命体とは戦うつもりはこれっポチも無かった。ただ気をこちらに向けさせてエレナ達の方へと向かわないようにするだけでいい。
「創造」
剣を創造し謎の生命体に投げつける。コツンと当たると謎の生命体はこちらを向いた。
「nがoえすsaぷkなe」
「ほら、来いよ。残り時間鬼ごっこでもしようぜ」
捕まる或いは、制限時間内に脱出出来なければ死の戦いが今この瞬間に始まった。
実は謎の生命体さんの言葉の解読は結構簡単だったりする。




