戦いの果てに
爆発による煙が晴れると、そこには深くて広いクレーターがあった。
そして、そのクレーターには俺とナイトメアヘルの倒れている姿があった。
「うぐっ……なんとか……生きているな」
剣に全魔力を送り込んだせいで魔力が枯渇していて、魔力解放で起きた体の変化が元に戻っている。
それに、爆発で吹き飛ばされた時に骨でも折ったのか体が動かない。
「……ナイトメアヘルは——」
「残念だったな、我は生きているぞ」
俺の近くからナイトメアヘルの声が聞こえた。
声の聞こえた方を見ると、そこには両腕と横っ腹が吹っ飛んでいるナイトメアヘルが倒れていた。
あのゼロ距離こを受けても尚、まだ生きているとは中々しぶとい奴だ。
「今すぐ貴様を殺してやりたいところだが、流石の我もこの傷では満足に貴様を殺すことが出来ない」
「………」
「まあいい、この勝負の決着はまた後日に預けるとしよう」
また後日……か。
今俺がこいつを倒さなかったせいで街の住民は眠ったままか……。
「……もし、貴様がこの街の住民について考えているのであれば、この体の元々の持ち主がいた研究所を探してみろ。そこに全住民がいる」
「だが、その住民の精神はお前の悪夢の世界に——」
「バカか貴様。我の世界は一度この愚か者に侵食され、昨日を一時的に封じられた。それと同時に住民の精神を抑える機能も停止し、精神は元の体へと戻った。ま、一度は侵食された世界内にいた精神が無事かどうかは知らないがな」
それが本当か嘘かはわからないが、もし仮に本当だとしたら俺の目的の一つは達成出来たわけだ。
精神については無事だと思う。何たって、世界を切り取って、それを自分の世界にするという規格外の男がいるからな。
「さて、そろそろ我はここを去らせてもらう」
「逃げのか?」
「バカ言え。貴様も我もこの体、勝負の続きなんて出来るわけなかろう」
そう言ってナイトメアヘルは触手を使い、体を持ち上げて足が地面に着くと触手を引っこめる。
その触手で俺を殺せるんじゃないかとも思ったが、さっきナイトメアヘルが体を持ち上げるために使った触手はとても弱々しかった。
「今は退くが、今度会った時には必ず貴様の体を奪うとしよう」
「フッ、やれるもんならやってみやがれ」
「……では、また会おう。我が宿敵よ」
そう言い残して、ナイトメアヘルはリアラ達がいる場所とは反対に向かって歩いて行った。
そして、ナイトメアヘルが見えなくなったと同時にリアラ達が駆けつけて来た。
「シロウさん、大丈夫……ではないですね」
「うわぁー、こりゃ派手にやったね〜」
「感想はいいから早く回復してくれ」
「あ、はい!」
リアラは回復魔法による俺の治療を始める。
「ヒーリング!」
リアラがそう唱えると、リアラの手から黄緑色の光が現れ、その光が俺の体を包み込み痛みを消していく。
だが、消えたのは痛みのみであって傷は未だに残っている。
「なあリアラ」
「…………」
「ん?どうかしたか?」
「あ、いえ、何でもありません」
回復に集中していたのか、二度目の声でリアラが反応する。
一見ボーっとしているようにも見えたが……気のせいだろう。
「リアラ、もっと一瞬で全回復する魔法ないのか?」
「え?」
「いやだから、一瞬で——」
「あるわけないじゃないですか」
「………え?」
いや、回復魔法ってあれだろ?使うと一定体力が瞬時に回復するっていうあれだろ?
それとももしかして、この世界の回復魔法はホ〇ミ系じゃなくてリホイ〇系だったというのか?
「まあ、正確には使えないだけなんですけどね」
「使えない?」
「瞬時に対象を完全回復する魔法にヒーラというものがありますが、それは神の領域に足を踏み入れるという事と等しく、少しでも使えば罪人扱いです」
「ふ〜ん」
神の領域には足を踏み入れてはならないね。
そう考えると、結構この世界の回復魔法って俺がいた世界で言う薬みたいなものか。
「それじゃあ、いましているこの魔法はなんなんだ?」
「この魔法は、対象の痛覚を一時的に麻痺と治癒力を活性化させて回復を行うのです」
なるほど、だから痛みだけ消えて傷は残ったのか。
そう言えば、レジェスの時もリアラに治療されてからしばらくして痛みが突然来たな。それに、あの後いつもより早く傷が治った気がする。
「それより、立てますか?」
「いや、多分骨が数本折れてる。魔力がすっからかんだ」
「そうですか……。骨に関しては治るのを待つしかありませんが、魔力についてはどうにか出来ますよ」
「本当か?」
「回復魔法の一種にマホギブという使用者の魔力を対象の者に分け与えるものがあります」
魔力を貰うのはありがたいが、血液みたいにその魔力が体に適応しないなんてことがあるかもしれないが、今はそんなことを心配している場合ではない。
取り敢えず、少しでも魔力を回復させなければ傷が治るまで全く身動きが取れない。
「それじゃあ、そのマホギブを少しだけやってくれ」
「了解です」
そう言うと、リアラは両手を俺の腹に置く。
そして、リアラの両手にリアラの魔力が集まってくる。
「……!?」
「どうかしたか?」
「……シロウさん、魔力の回復が終わり次第早急にギルドカードを見せてください」
「別にいいけど……何故急に?」
「確認したいことがあります」
「確認したいこと?」
ギルドカードには称号と何らかの理由で表示されないスキルや属性を除いた冒険者のステータスが記されており、唯一他人に自分のステータスを公開出来る物だ。
その俺のギルドカードを見て一体何を確認するっていうんだ?
「マホギブ!」
「………」
リアラがそう言った途端に、俺の体に何かが流れ込んでくるような感じがした。約一分間その状態が続き、ある程度回復したところでリアラは手を離す。
「……まさか、ここまで私の魔力が適応するなんて……」
「何か問題でもあったか?」
「いえ、特には……って、シロウさん!?」
「な、何だ!?」
急に声を上げるリアラは俺を見て驚きの顔をしていた。リアラだけではない。すぐ近くにいたエレナも同じような顔をしていた。
しばらくして、俺は傷だらけでボロボロだったのにも関わらず、何事も無かったかのように立てていたことに気が付いた。
「エ、エレナさん!私はとんでもないことをしてしまいました!」
「おお落ち着いてリアさん!!あ、そうだ!シロウ治癒力が急激に上がったって考えれば問題ないです!」
「そ、そうですね!そう、私は何も悪くない……」
「落ち着くも何も、まずお前らが落ち着け」
何故魔力が回復した途端に全ての傷が治ったのかはわからない。だが、この有り得ない速度で回復は俺の両親が殺され、殺した奴が俺をさした時にも同じことが起きた。
という事は、リアラの魔法によるものだという可能性は低い。
「兎にも角にも、ギルドカードを見ようぜ。そしたら何かわかるかもしれない」
「そ、そうですね」
そして俺は、ロングコートの中に着ている服のポケットからギルドカードを取り出した。
「よくあの戦いの中無事でしたよね」
「魔力解放の強化がギルドカードにまで及んでいたのか?」
「よくわからないですけど、そうじゃないですか?傷一つ付いていませんし」
取り出したギルドカードを俺を含め全員が見えるようにする。
俺達はそのギルドカードを見て、驚きのあまり声が出なかった。
シロウ サクラギ
17歳
MP50/1200
Lv60
装備 青のロングコート 鉄の小手 皮のブーツ
装備武器 なし
力 202
耐久 153
俊敏 146
幸運 5
スキル
・創造Lv8 ・不運 ・高速思考Lv5 ・魔力解放
・自動回復Lv8
属性
・剣属性 ・無属性 ・異属性
言うか言うまいか迷ったが、あえて言わせてもらおう。
「何この突然のチート?」
あまりにも突然過ぎる俺TUEEEEに困惑する俺と、今まで見たことの無いものを見る目で俺を見る二人の姿がそこにあった。
この時点でシロウの正体に気付く人もいるんじゃないかな?




